およぞ600年前、室町の時代。大寧寺3代目住職の定庵殊禅(じょうあんしゅぜん)の盛名を慕い、住吉大明神は時には老翁、時には婦人の姿に化して仏道修行に励んでいました。
ある晴れた月の夜、禅師が境内を散策していると、石の上で座禅を組む老翁に出会います。禅師が名を尋ねると、老翁は「松風の声のうちなる隠れ家にむかしも今も住吉の神」と一首の和歌を通じて、その真の姿が住吉大明神であることを明かします。
禅師は直ちに住吉大明神を部屋に招き、仏道の奥義を印可する菩薩大戒と錦の袈裟を老翁に授けます。老翁はその恩に報いるために、現在の恩湯の位置に温泉を沸かしたことを伝え、大きな竜となって雷雲とともに天空に去って行きました。