長門湯本REPORT:第2回長門湯本温泉みらい振興評価委員会が開催されました
この回の要点 | 第2回(2020年12月17日)
新型コロナ下で全員オンライン開催。観光地経営の評価方法を具体化した回。
- 定量(RevPAR等)と定性(メディアの取り上げられ方等)を組み合わせる評価の枠組みを確認
- 梅川委員長・林委員は欠席(事前意見提出)
結論:数字だけでなく「どう取り上げられたいか」を含めた評価軸を整理。
2020年12月17日(木)、第2回目となる「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」が開催されました。新型コロナウイルス感染症対策のため、今回も全委員がオンラインで参加する形式での開催となりました。
これは、外部の専門家等が長門湯本温泉の観光まちづくりを検証し、その知見をまちの未来に生かすために、長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例に基づき、年に2回開催されるものです。
■ <長門湯本温泉みらい振興評価委員会>
長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例(令和元年12月26日条例第16号)に基づき設置され、第三者評価とするため外部の有識者で構成。長門湯本温泉の持続的な観光まちづくりを進めるため、本基金の使途の透明性の確保および運用の適正化を狙いとする。
長門市およびエリアマネジメント法人(長門湯本温泉まち株式会社)が本基金を財源として実施する事業を評価するとともに、持続的な観光まちづくりにつながる事業に要する本基金の処分について、市長に意見を述べる。
※この会議は原則公開となっており、会議の模様はyoutubeにて全編が公開されています。
評価委員会には以下のメンバーが参加しました。
| 氏名 | 所属・分野 | 出欠 |
|---|---|---|
| 梅川 智也(委員長) | 國學院大学/学識経験者 | 欠席(事前意見提出) |
| 高橋 俊宏 | 株式会社ディスカバージャパン/メディア | オンライン |
| 田中 智之(委員長代理) | 熊本大学大学院/建築・空間デザイン | オンライン |
| 中尾 大介 | 株式会社WAKU WAKUやまのうち/まちづくり・金融 | オンライン |
| のかた あきこ | 旅ジャーナリスト | オンライン |
| 林 千晶 | 株式会社ロフトワーク/コミュニティデザイン | 欠席(事前意見提出) |
| 星野 佳路 | 星野リゾート/観光業 | オンライン |
| 伊藤 就一 | 長門湯本温泉まち株式会社 代表取締役 | オンライン |
| 木村 隼斗 | 長門湯本温泉まち株式会社 エリアマネージャー | オンライン |
| 大谷 和弘 | 長門湯守株式会社 共同代表 | オンライン |
| 泉 英明 | 有限会社ハートビートプラン 代表取締役 | オンライン |
| 江原 達也 | 長門市長 | オンライン |
| 田村 富昭 | 長門市 経済観光部 | オンライン |
審議・検討事項
(1)観光地経営の評価方法について
(2)長門湯本温泉まち株式会社の取組状況及び2021年度事業計画について
開会
まず冒頭に、江原達也 長門市市長より開会の挨拶が行われました。
〜市長 挨拶要旨〜
市長は「長門湯本温泉は、本年3月の整備完了から早いもので9ヶ月が経過した。温泉街では恩湯や恩湯食を除き6件の店舗が増えたことに加え、先月11月には新たに飲食店が2店舗開業した」と振り返りました。「整備によって新たに生まれた音信川の親水空間を舞台に、シネマイベントも先日開催された。私も会場に足を運んだが、非常に素敵な空間演出で、地元の方も大変楽しんでいる姿が印象的だった」と続けます。
そのうえで「これまでの公民連携による取り組みをもとに、現在のコロナ禍にあっても様々な取り組みを通じて温泉街の魅力が少しずつ増し、多くの観光客の方々に来ていただいている」と述べる一方、「これまでの温泉街には見ることができなかったほどの観光客の方々に来ていただいていることで、従来とは異なる様々な課題も発生しうると考えている。こうした課題に向き合いながら、これまでのまちづくりの成果を活かし、公民が連携した持続的な観光地経営をしっかりと進めていきたい」と意気込みを示しました。
(1)観光地経営の評価方法について
長門市経済観光部 田村理事から、評価方法の案について説明がありました。
〜報告要旨〜
「長門湯本温泉の観光まちづくりについては、持続的な観光地経営を行っていくため、前回の委員会から議論を進めてきた。観光地経営のモニタリング指標に加え、長門湯本温泉まち株式会社というエリアマネジメント会社の取り組み、また行政が行っていく取り組みについて、皆様に定期的に評価をいただいて今後の方向性を確認していきたい」との基本方針が示されました。
具体的な評価の仕組みとして、2層構造が提案されました。まち会社(エリアマネジメント会社)には観光地経営のモニタリング指標とまち会社の取組について5点満点の定量評価を、行政(市全体を含めた観光振興の取組)には定性的なコメントによる評価を行うかたちです。
「この定量的評価と定性的評価の2つによって、今後の取り組みの方向性を確認していきたい」「評価結果については、まち会社への定量評価は各委員の点数を平均化したものを公表、定性的コメントは各委員の名前とともに公開していくことで、長門湯本温泉に関わる各関係者がそれぞれ取り組むべき方向性を認識できるようにしていきたい」との運用方針も共有されました。
スケジュールとしては、本格的な評価は次回(令和3年春)から開始予定。以後、毎年春・冬の年2回を定例ルーチンとして運用していく計画が示されました。
上記について、各議員からの意見は以下の通りです。
〜欠席委員コメント要旨〜
梅川委員長:短期的ではなく中長期的な視点で評価をすべき。短期的視点で評価を行うとエリアマネージャーもそれに対応する動きになってしまう。
林委員:評価に関しては取り組んだ結果のよし悪しではなく、継続的に取り組んでいき変化した点を評価すると良い
〜星野委員要旨〜
星野委員は、提案された評価案について深く踏み込んだ問題提起をしました。
「観光客・働き手・地域住民の満足度を高める好循環というのは、それぞれの視点が違うため、全員にとっていい状態というのはありえない。観光客視点で見た時と働き手視点で見た時、地域住民視点ではそれぞれ違うので、観光客×働き手目線では評価できるけど、観光客視点だとまだちょっと、というようになった時に何点に当たるのかが難しい」と指摘しました。
「点数そのものよりも、そう評価した背景が大事だ。例えば3点とか2点と言った時には、なぜそこに点になったのかという定性的な部分をしっかり書いたり出したりしないと誤解を受ける可能性がある。点数が何点だったかということよりも、そういう点をつけた背景がどういう理由によるものかをしっかり重視していただく前提が大事」。
さらに、「情報量のアクセシビリティ」という重要な観点も提起。「私自身、観光客・観光産業の視点での情報量は結構入ってくる。働き手については星野リゾート社員の満足度調査を引っ張り出せば分かる。でも地域住民の情報は、おそらく一番アクセスがない。あなたここ2点つけたけれども地域住民の本当の情報を把握できているんですかと言われると、正直自信を持って答えにくい。評価するに足る情報が手に入る状態かどうかも、すごく大事なポイント」。
そのうえで、評価項目の文言そのものへの提案として「『観光客・働き手・地域住民との関係者の満足度を高める好循環』というよりも、『まち会社の取り組みについてどう評価しますか』と、ダイレクトに5段階で問いかける形のほうが、評価する側もコメントしやすい。非常に満足、満足、普通、やや不満、非常に不満。そして、なぜそう評価したかをきっちり定性的に記述してもらう」と提案しました。
「木村さん(エリアマネージャー)がこの1年どうだったかと言われると、私はバシッと言える気がする。なぜならこうこうこうで、と。それをみんなから出してもらって、確かそうだったよねとなるのは、やりやすい」と、評価の運用イメージを共有しました。
〜泉氏(デザイン会議)発言要旨〜
ローカルディベロッパー機能の構想者である泉英明氏(デザイン会議)から、運用上の補足提案がありました。
「これまで何度も整理してきた1から6までの指標について、それぞれに点数をつけるのがいいのか、それともデータを揃えた上で総合的に判断していただくのがいいのか。1番2番はあの数字で出てくるが、3・4・5はヒアリングや地域の方への調査、従業員へのアンケートが主体となるため、評価の質的次元が異なる」と、項目ごとの性質の違いを踏まえた評価設計の難しさが共有されました。
星野委員はこの問いに「それぞれで評価しろと言われる方が、気持ち的には楽というか、自分が評価しているロジックについてきちっと説明できる。ここはあんまり情報が入っていないんだけれども私はこう思う、というようなことを言いやすい」と応答。「1から6には優先順位もある。今の時期はここが大事だ、ダメはダメで今しょうがないよね、というのもある」と、評価の優先順位の重要性も提起しました。
〜のかた委員発言要旨〜
のかた委員は「5段階評価は誰もが分かりやすい形で、これは良いと思う。各項目について1から10点のような形で点数と理由を書いてもらう方式が、旅館や旅行会社のアンケートでもよく使われている」と運用面で支持しました。
また、「都立大学との取り組みで進めている従業員満足度調査などの結果も公開することで、私たちにも改善の参考になるし、働いている人のモチベーションアップにもつながる。方向性を確認するための評価委員会という最初の説明の通り、皆の向かうべき方向性を分かりやすく共有するために、優先順位をつけて評価していくやり方は非常に良い」とコメントしました。
〜中尾委員発言要旨〜
中尾委員は、評価する側の立場としての率直な懸念を表明しました。
「私自身は長門湯本に暮らしておらず、働いてもいないので、観光客目線が一番になる。長野県の温泉地と比較する目線はあるかもしれない。ただ、長門湯本がやろうとしているような1から6番までのモニタリング評価を、まともにやっている温泉地は他に1つもない。長門湯本の指標を見て評価するというのは少し重たい」と、独自指標の評価の難しさを指摘。
そのうえで、評価の目的論を踏み込んで議論。「何のためにモニタリング評価をするのか。まち会社の取り組みの方向性が今のままでいいのか、修正やターゲット絞り込みが必要なのか、次のアクションにどう繋げるかという視点が大事」と方針を共有。
「私が一番恐れているのは、点数が低いことで関係者の熱量が落ちて、疲れちゃうとか持続できないというようになってしまうこと。それは本末転倒。関係者のマインドが上がっていくような評価のあり方を意識したい」と、評価が現場の士気に与える影響への配慮を強調しました。
「これを何に使うのか、何に繋げるのかを評価する立場としてもちゃんと理解しておきたい」との要望も寄せられました。
〜高橋委員発言要旨〜
メディア露出の評価について、高橋委員は重要な質的観点を提起しました。
「単に露出があったから良いというわけではなく、長門湯本がどう取り上げられたいのか、その理想に合わせて取り上げてくれているメディアをきちんと評価すべきだ。価値あるかたちで取り上げられればイメージアップだが、本質が伝わらない取り上げ方は逆に『ダメージアップ』になる。質の高い観光地を目指すのであれば、それに合った意図を汲んでくれたメディアの露出を評価し、そうしたメディアをきちんと呼び込んでいくことが重要」と述べました。
これを受けて星野委員も「メディア露出は全量を把握したうえで、質的な評価は段階的に積み上げていくのがよい。100の露出のうちどれだけが意図に沿った『良い露出』だったかという定性的な議論を、評価委員会の中で重ねていくことで、戦略が洗練されていく」と応じました。
委員会での議論を踏まえ、評価方法は以下の通り取りまとめられました。
評価手法の選定: まち会社の取り組みに対しては「5段階評価+定性的な根拠コメント」を採用し、行政の取り組みに対しては「定性的なコメント」を採用することとなりました。
評価項目の修正: 評価項目の文言は、意図を明確にするため「まち会社の取り組みについてどう評価しますか」というダイレクトな問いかけへと修正されました。
運用の基本姿勢と優先順位: 評価を運用するにあたっては、関係者のモチベーションやマインドが向上するような「前向きな姿勢」を重視することが確認された。また、各評価項目を横並びで扱うのではなく、時期に応じた優先順位を意識して評価に臨むことも合わせて合意されました。
なお、これらの手法を用いた本格的な評価は、次回(令和3年春開催)から実施されます。
(2)長門湯本温泉まち株式会社の取組状況及び2021年度事業計画について
長門湯本温泉まち株式会社 木村エリアマネージャーより、令和2年度の取組状況の振り返りと、令和3年度事業計画について説明がありました。
〜要旨〜
令和2年度(コロナ禍初年度)の状況:
宿泊者数については、3月から6月にかけて大きく冷え込んだ一方で、7月以降は山口県内・広島からの個人客が前年を上回る水準で推移したことが報告されました。「GoToキャンペーンや県・市の支援もあり、近隣の個人客が温泉街を支えてくれた」と説明。年末年始の感染拡大局面を踏まえ、SNS広告強化や2月のライティングイベント実施など、足元・中期の両面で対応していく方針が示されました。
エリアマネジメント事業の取組:
ディスティネーションマネジメント機能では、Discover Japan Webでの13回連載によるブランディングを実施。ローカルディベロッパー機能では、一の瀬広場に面した築70年超の長屋「だいご長屋」をリノベーション・オープン(瓦そば屋+カフェ&ショップ)。地域振興機能では、温泉街全体としての感染症対策発表と、景観協定の締結に向けた地元勉強会が進められました。
「コロナ禍であっても止まらずに、これまで蓄積してきたDiscover Japanとの連携によるブランディング、新規拠点の整備、地域全体の足並みを揃える基盤づくりを進めてきた」との総括が共有されました。
2021年度事業計画:
来年度に向けた計画として、以下の方向性が示されました。
・企画検討サイクルの見直し:半年前にリリースできる体制への移行
・温泉街と周辺の体験・食の予約システム導入
・コンテンツ造成費の独立した事業区分化
・ホタル生息環境の維持・改善:ホタルが生息する温泉街としての生育環境への注力
・地域広報誌の創刊:地域内コミュニケーションの強化
これらの説明を受け、各委員から意見が寄せられました。
〜星野委員要旨〜
星野委員は「日本の中でも、これだけ高尚な目標を立ててきっちり取り組んでいる温泉街は非常に珍しい。優秀な人材が地域づくりにコミットし、地元の事業者も関わってくれている点も含めて、大事にしていくべきケースだ」と高い評価を述べました。
そのうえで「これはマラソンであって短距離走ではない。最初から目標を高くしすぎず、フレームワークをきっちり作って毎年改善していくことが重要。私たちも今のかたちになるまで29年かかった」と、長期的視点での歩みの重要性を強調しました。
具体的な提言として、まず企画サイクルの見直しについて「半年前ではなく『冬の反省は冬のうちに、秋の反省は秋のうちに具体化しておく』のがよい。シーズンが変わると忘れてしまうため、その季節のうちに翌年の企画まで進めておくのが効果的」と指摘。あわせて足湯の温度問題(「足湯が水だというコメントが利用者から散見される。温泉街として優先度を持って対応したい」)、平日コンテンツの強化(「平日のコンテンツが弱いと土日への集中がさらに進む。平日に楽しめるコンテンツを開けておくことが大切」)と、運営上の具体的な観点が共有されました。
〜田中委員要旨〜
田中委員は「マラソンであって短距離走ではないという話は非常に印象的だ。スタートダッシュで疲れてしまわないか、スタッフの体制も含めて持続可能な進め方が大事になる」と応じました。
木村エリアマネージャーをはじめとするスタッフ体制の確保と無理のない事業推進について、改めて確認の言葉を述べました。中尾委員からも指摘されていた「関係者のマインドが上がっていく評価のあり方」と通底する観点として、評価委員会全体としても継続性・持続可能性への意識が共有された場面となりました。
〜のかた委員・高橋委員からの補足コメント〜
のかた委員:Discover Japan Webの13回連載が長門湯本の認知に大きく寄与している実感が共有され、これからもメディアの目線から長門湯本のストーリーを発信していくことへの意欲が語られました。
高橋委員:引き続き「意図を汲んでくれるメディア」との関係を編集者側の立場から築いていく意向が示されました。
閉会
今回の会議では評価方法の方向性が定まり、次回(令和3年春開催)からの本格的な評価のスタート地点が整いました。
「短期的な数字に振り回されることなく、中長期的な視点で温泉街の歩みを丁寧に積み重ねていく」「関係者のマインドが上がっていく評価のあり方」「マラソンであって短距離走ではない」——委員会の議論を通じて、コロナ禍初年度の不確実性のなかでも、長門湯本温泉のまちづくりが拠るべき姿勢が、改めて共有された回となりました。
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以上、約2時間にわたる議論を経て、第2回「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」は終了しました。整備完了から9ヶ月、コロナ禍の只中で迎えた節目の回。評価のあり方を丁寧に設計する——この段階での議論の質が、その後5年・10年の評価委員会の土台を形作っていくことになります。長門湯本温泉のまちづくりは、コロナという未曾有の不確実性のなかでも、着実に持続可能な仕組みを組み上げながら歩みを進めていきます。

































































































