うたあかりレポート:長門湯本温泉「音信川うたあかり」にみる、みんなで育てるまちの姿
うたあかり2026 オフィシャルレポートをお届けします
音信川を舞台に、金子みすゞの詩が灯る「うたあかり」
「音信川(おとずれがわ)うたあかり」は、山口県長門市出身の童謡詩人・金子みすゞさんの詩を主題に、温泉街全体がそのテーマに合わせた温かな灯りに包まれるイベントです。2018年から始まったこの取り組みは、かつては静かだった冬の長門湯本温泉に、新たな活気と風景をもたらしました。 会場となる温泉街の中心、音信川の周辺には、みすゞさんの詩をモチーフにしたオブジェが並び、川面に映る光や、階段に投影される影絵、そして詩の朗読が一体となって、訪れる人を詩の世界へと誘います。
新しい広場に「はじめての思い出」を灯す
長門湯本温泉では、2016年から街をあげて大きなリニューアルを進めてきました。新しく整備された「竹林の階段」や「雁木(がんぎ)広場」は美しい場所であるものの、そこで暮らす人や旅する人が、これからたくさんの思い出を積み重ねていく場所でもあります。 「うたあかり」は、そんな新しい場所に、地域の人々の「はじめての思い出」を書き込む大切なきっかけになっています。ただ灯りを飾るのではなく、そこにある階段や広場を舞台にすることで、無機質だった場所が少しずつ、みんなにとっての「大切な居場所」に変わっていく。それは、作ることで完成と捉えられがちな「まちづくり」に、温かな命を吹き込むようなプロセスです。
街を彩る8つの灯りのエリア
イベント期間中、温泉街は8つのエリアに分かれ、それぞれに地域の人々の想いが込められた灯りがともります。
立場を超えて、手を取り合う「地域総出のおもてなし」
このイベントを支えているのは、驚くほどたくさんの人たちの協力です。地元の旅館やお店の方々はもちろんのこと、老人会やボランティアのみなさん、さらには市議会議員の方々までもが、立場を超えて一丸となって力を貸してくださっています。 「誰かにお任せ」するのではなく、立場が違う人たちが一つの目的に向かって一緒に汗を流す。そんな「地域総出のおもてなし」ともいえる一体感こそが、今の長門湯本温泉を動かす大きなエンジンになっています。
学びを歌声に乗せて、子どもたちが主役になる夜
準備の風景の中で特に印象的なのは、地元向陽小学校の皆さんです。この一年、授業を通じて地域の魅力やまちづくりについて深く学んできた皆さんは、開催の前日、自分たちの手できれいに清掃した雁木広場に、手作りの「土あかり」を一つひとつ丁寧に設置しました。 この「土あかり」は、長門市が誇る伝統工芸「萩焼深川窯」の作家・坂倉善右衛門氏の指導を受け、制作を手伝っていただきながら作り上げたものです。地域の伝統文化に触れ、本物の技を教わりながら完成させた灯りは、子どもたちにとっても特別な誇りとなりました。
さらに点灯式の式典では、一年間の学習を通じて取り組んできたことについて堂々と発表しました。そしてフィナーレには、恩湯広場に集まった全員が心を合わせて合唱を披露。冬の夜空に響き渡る子供たちの清らかな歌声は、その場にいたすべての人々の心を揺さぶり、街に新しい息吹を与えてくれました。
金子みすゞさんの言葉を、街の灯りとして受け継ぐ
「うたあかり」の根底には、金子みすゞさんの優しい視点や言葉があります。みすゞさんの言葉が夜の温泉街に温かな灯りとして浮かび上がる風景は、この土地にしかない唯一無二のものです。 目に見える美しさだけでなく、伝統を受け継ぐ「土あかり」のぬくもり、子供たちの発表や合唱、そして朗読される詩に耳を傾ける。地域の文化を大切に守りながら、今の時代に合った形で表現し直すことで、温泉街はより深い魅力を放つようになります。
灯りの先に続く、これからの街の物語
「うたあかり」は、単なる冬のイベントではありません。伝統を繋ぐ学び、子供から大人までが一緒に行う準備や清掃、そして夜空に響く詩と歌声。その積み重ねが、長門湯本温泉というコミュニティを強く、温かく結びつけています。 自分たちの手で磨いた場所に灯がともり、自分たちの言葉と歌声で街を彩る。その感動を知る子供たちがいる限り、長門湯本温泉の未来はこれからも明るく照らされ続けていくに違いありません。住民自らが街を愛し、誇りを持って関わるその姿こそが、訪れる人々を惹きつける最大の魅力となっています。

































































































