長門湯本NEWS:ながトークvol.32レポート〜哲学者・山本哲士さんが語る「恩湯の文化資本を哲学する」〜
毎回、自分らしいスタイルで街を面白くする人々を迎え、その思いや活動に迫る「ながトーク」。第32回となる今回は、『知的資本論』や『文化資本論』などの著作で知られる哲学者・山本哲士さんをお迎えし、恩湯共同代表の大谷和弘氏、温泉街エリアマネージャーの木村隼斗氏とともに、「恩湯の文化資本を哲学する」をテーマに語っていただきました。
会場には地域の方々や常連ゲストのほか、遠方からの参加者も多く、約30名が集結。終始あたたかくにぎやかな雰囲気に包まれました。
山本先生の長門湯本訪問は今回で3回目。来るたびに「社会ではなく、場所がつくられていく」と感じるとの言葉から、今回の対話が始まりました。
山本先生によれば、「社会をつくる」とは規範とルールに従う設計であり、一方「場所をつくる」とは、歴史・文化・気候・地形といった“足元にあるもの”を感じながら育てていく行為だといいます。
ヨーロッパの都市・観光地の例を挙げながら、
“規則で安全を担保する社会空間(ソーシャル)”と、
“互いの尊重と感性で成立する公共空間(パブリック)”
との違いを紹介。
それは街並み・乗り物・飲食・文化体験、さらにはトイレのあり方まで「場所のホスピタリティ」として表れ、そこに“生きた場所”が立ち上がると語られました。
話題は、長門湯本に流れる「情緒」へと展開。
大谷和弘さん(長門湯守 共同代表)は、古事記を長年読み続けた体験を通して「場所の意思」の存在に気づき、それが恩湯再生の原点となったと振り返りました。
単なる温泉事業ではなく、
“ここでしか成立しない必然性をつくること”。
復活した献湯式や、住吉神の存在が象徴するように、歴史の連続の上に「文化資本」が立ち上がっていく。それを体現しているのが恩湯だと山本先生は語ります。
後半は参加者からの質問も交えながら、「ホスピタリティ」「文化」「危険との共存」「教育」など幅広い話題へ。印象的だったのは、事前の設計を固定化するのではなく「快が生まれるコミュニティ」を受け入れていく姿勢。
トーク後に行われた茶会のエピソードでは、型にはまらず、互いの知恵・技術・思いが響き合う時間が共有され、「場所の意思が立ち上がる瞬間とはこういうことか」と語られました。
社会や経済のために場所をつくるのではなく、場所が持つ意思に耳を澄ましながら暮らしていく。
今回のながトークは、長門湯本がこれから育んでいこうとしている未来の形を、そっと照らしてくれる時間となりました。

































































































