長門湯本NEWS:ながトークvol.33レポート〜金子みすゞ記念館館長 矢崎節夫さん講演〜
毎回、自分らしいスタイルで街を面白くする人々を迎え、その思いや活動に迫る「ながトーク」。第33回となる今回は、金子みすゞの作品を世に送り出し、長年その魅力を伝え続けてきた童謡詩人であり、金子みすゞ記念館 館長の矢崎節夫さんをお迎えし、みすゞの詩が持つ深い慈しみと、彼女の故郷・仙崎、そして長門への想いをご講演いただきました。
講演の冒頭、矢崎さんは窓の外の雨に目を向け、不思議な「巡り合わせ」の話から始められました。 「赤ちゃんの頃に流した涙は、蒸発して雲になり、雨や雪として再び地上に降りてくるまで約80年かかると言われています。今日のこの雨の中には、80年前を生きた人たちの涙が混ざっているかもしれません。命も水も、すべては回っているのです」 すべてがつながっているという宇宙的な視点は、まさに金子みすゞの詩に通じる世界観です。
今や世界16ヶ国語に翻訳され、教科書でも愛されるみすゞの詩。しかし、矢崎さんが彼女の存在を知った当初、その作品のほとんどは埋もれたままでした。 19歳の頃、一編の詩「大漁」に出会った衝撃。「浜の喜びと、海の悲しみ。この世は二つで一つ」。その真理を突いた言葉に魅了された矢崎さんは、それから16年もの間、彼女の足跡を追い続けました。 ついに1982年、みすゞの実弟である上山雅輔(影山嘉雄)さんと連絡が取れた時、「姉の名前を覚えていてくれた人がいたなんて」という言葉とともに、512編もの遺稿が詰まった3冊の手帳が託されました。一人の詩人の執念と、遺族の想いが重なり、みすゞは再び現代に蘇ったのです。
有名な「私と小鳥と鈴と」の一節について、矢崎さんはこう語ります。 「『違う』ということは、それだけで存在理由になります。それを全部いいと肯定する勇気を持てるかどうか。動植物を含め、私たちは生かされているということを忘れてはいけません」 また、みすゞの詩は単なる「優しさ」だけでなく、汚いとされる「ぬかるみ」の中に雨の喜びを見出したり、慣れの中に潜む「傲慢さ」に気づかせてくれたりと、多角的な視点(眼差し)を授けてくれると説かれました。
長門湯本温泉で開催されている「うたあかり」についても触れられました。 「湯本の方々が、わざわざ仙崎のみすゞさんの詩をテーマに素晴らしいイベントをしてくださっている。若い人たちが中心となって彼女の言葉を灯していることに、みすゞさんもきっと一番喜んでいるはずです」 仙崎に生まれ、詩を書き、そして今、長門の地で再びその言葉が光となって街を照らしていることへの深い感謝を口にされました。
「言葉の力は、暴力や権力とは違い、納得することで本質を変えることができます。ぜひ、1日に一度でもいい、みすゞさんの詩を声に出して読んでみてください。五感で彼女を感じることができます」
雨の音を聞きながら、矢崎さんの静かで情熱的な語りに引き込まれた1時間。参加者一人ひとりが、自分の中に眠る「みすゞ的な眼差し」を見つめ直す、温かなひとときとなりました。

































































































