長門湯本REPORT:第4回長門湯本温泉みらい振興評価委員会が開催されました
この回の要点 | 第4回(2021年12月3日)
大規模落雷による照明被害への対応と、専門委員会の設置を決めた回。
- 落雷で約70箇所の照明等に不具合。総額約3,300万円・自己負担約300万円で対応
- 建築・土木分野の専門委員会を設置。基金の修繕予備費・委員長先決の枠組みを整備
結論:ハード資産を継続的に維持・更新する仕組みづくりに着手。
2021年12月3日(金)、第4回目となる「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」が開催されました。第1回からの3回はすべてオンライン開催だったため、今回が委員会として初めての対面(一部オンライン併用のハイブリッド)開催。「第4回にして初めてリアルで会えた」という梅川委員長の言葉が、この回の歴史的な意味を象徴する開催となりました。
さらに、ちょうど同日のお昼に長門湯本温泉が「土木学会デザイン賞2021」最優秀賞を受賞——2作品しか選ばれない最高栄誉のうちの1つに選出されたことが発表され、会議は祝賀ムードのなかでスタートしました。
これは、外部の専門家等が長門湯本温泉の観光まちづくりを検証し、その知見をまちの未来に生かすために、長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例に基づき、年に2回開催されるものです。
■ <長門湯本温泉みらい振興評価委員会>
長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例(令和元年12月26日条例第16号)に基づき設置され、第三者評価とするため外部の有識者で構成。長門湯本温泉の持続的な観光まちづくりを進めるため、本基金の使途の透明性の確保および運用の適正化を狙いとする。
長門市およびエリアマネジメント法人(長門湯本温泉まち株式会社)が本基金を財源として実施する事業を評価するとともに、持続的な観光まちづくりにつながる事業に要する本基金の処分について、市長に意見を述べる。
※この会議は原則公開となっており、会議の模様はyoutubeにて全編が公開されています。
評価委員会には以下のメンバーが参加しました。
| 氏名 | 所属・分野 | 出欠 |
|---|---|---|
| 梅川 智也 | 國學院大学/学識経験者 | 出席 |
| 高橋 俊宏 | 株式会社ディスカバージャパン/メディア | 出席 |
| 田中 智之 | 熊本大学大学院/建築・空間デザイン | 出席 |
| 中尾 大介 | 株式会社WAKU WAKUやまのうち/まちづくり・金融 | 出席 |
| のかた あきこ | 旅ジャーナリスト | 出席 |
| 林 千晶 | 株式会社ロフトワーク/コミュニティデザイン | 欠席 |
| 星野 佳路 | 星野リゾート/観光業 | 欠席 |
| 伊藤 就一 | 長門湯本温泉まち株式会社 代表取締役 | 出席 |
| 木村 隼斗 | 長門湯本温泉まち株式会社 エリアマネージャー | 出席 |
| 大谷 和弘 | 長門湯守株式会社 共同代表 | 出席 |
| 江原 達也 | 長門市長 | 出席 |
審議・検討事項
(1)長門湯本温泉まち株式会社の取組状況および次年度事業計画について
(2)大規模落雷による照明故障への対応について
(3)専門委員会の設置について
(4)基金の取り崩しルールの明確化について
開会
まず冒頭に、江原達也 長門市市長より開会の挨拶が行われました。
〜市長 挨拶要旨〜
本日はお忙しい中、ご出席いただき誠に感謝している。コロナ禍が一時的に収束している状況であり、委員の皆さんと直接お話しできることを嬉しく思う。本日正午には長門湯本温泉街〜長門湯本温泉観光まちづくりプロジェクトが「日本土木学会デザイン賞 最優秀賞」を受賞したとの発表もあった。日頃より、さまざまなご助言をいただいている評価委員の皆様に感謝する。
長門湯本温泉はハード整備の完了から1年9ヶ月が経ったが、コロナ禍で苦しい時期が多々ありつつも、一つ一つみなさんのご意見を聞きながらイベント等を実施し、多くのお客様に来ていただいている状況である。ハード整備は完了しているものの、多くのお客様が来ることによって新しい課題も見えており、皆様のご意見を聞きながら、しっかりと公民連携でやっていきたい。また、本日は次年度の事業計画についても、専門的な見地からご審議をお願いする。
(1)まち会社の取組状況および次年度事業計画について
長門湯本温泉まち株式会社 木村隼斗エリアマネージャーより、令和3年度上期の取組状況と、令和4年度事業計画案について報告がありました。
〜報告要旨〜
1. 宿泊・利用実績と新規店舗の動向
利用実績: 令和3年度上期の宿泊者数は、2019年比で4〜6月が半減、7〜9月が3割減(7割程度まで回復)という推移になりました。エリア別では、山口県内の個人客が安定して推移している一方、広島・福岡からの客足は不安定で、東京・大阪からの動きは依然として鈍いという見立てが共有されました。なお、日帰り利用は前年並みから微増傾向にあります。
新規店舗: 温泉街の新たな魅力として、クラフトビール店など3店舗が新しくオープンしたことが報告されました。
2. 令和4年度事業計画案:5つの方向性
① 季節魅力の創出(空間活用とイベントの拡大)
「リバーフェスタ」を温泉街のコンセプトである「オソト天国」のシンボルイベントに位置づけ、橋の上に設置するシェアキッチンを軸とした空間活用実験や、水辺広場・桜並木の活用検証を進めます。また、「うつわの秋」を2会場から3会場へ拡大するほか、10月の「川床喫茶」、11月の大谷山荘での「器と地元酒」イベントなどを連動して展開します。
② 広域連携とインバウンドに向けた準備
JR西日本、長門湯本温泉、星野リゾートの3社連携(令和3年4月発表)の枠組みをベースに、企画列車「ゆずきち号」の運行を継続します(令和3年度は7月に実施、6月・9月は中止)。さらに、総務省の映像コンテンツ事業を活用し、SBNR(スピリチュアル・バット・ノット・リリジャス/無宗教だが精神的な豊かさを求める層)志向のフランス人をターゲットにしたインバウンド向け映像制作を計画しています。
③ 情報発信・メディア露出の強化と課題
『Discover Japan』をはじめとするブランディング雑誌での露出を継続するほか、公式ホームページやSNSの運用を強化します。これにより東京や大阪など大都市圏からのアクセス増加が確認されています。一方で、今後は「地元市民への発信強化」が重要な課題として提起されました。
④ インフラ・美観維持と景観管理
「オソト活用協議会」との連携による毎月の清掃活動や植栽管理を継続します。また、景観協定については設立総会を経て、令和4年度から本格的な事務局運営フェーズへと移行させます。さらに、民地と公共空間の接続部を魅力的にするため、ベンチやパラソルの整備を進めていきます。
⑤ 横串体制の構築とコミュニティ連携
温泉街の各店舗が展開する季節メニューやイベントを横断的に紹介・展開し、JRのツアーなどとも連動させます。地域連携としては、向陽小学校のマーチング演奏会の誘致や、地域社会との対話の場である「ながトーク」の開催などを計画しています。
(2)大規模落雷による照明故障への対応
令和3年7月9日未明、長門湯本温泉で大規模落雷が発生。湯本地区で約70箇所の照明器具等に不具合が生じる事態となりました。事務局より、被害状況の詳細と修繕方針が報告されました。
修繕に必要な予算は、調査費555万円を含めて総額約3,300万円。このうち約3,000万円(9割程度)は保険対象で、自己負担分は約300万円と整理されました。復旧時期は令和4年度内を見込みつつ、コロナ禍の影響で部材供給が遅延している事情もあり、夜間運用に影響の大きいスクリム階段は、夜間プログラム制御から手動タイマー(5時半点灯)に切り替えての暫定運用が進められています。
「これは当初、基金の運用設計として想定していなかった事象」であり、コロナ禍に加えて落雷被害が重なるという想定外の事態を受け、長期的な基金積立計画を再検討する必要性が共有されました。
(3)専門委員会の設置について
落雷被害への対応を契機に、迅速な意思決定の仕組みとして専門委員会の設置が議論されました。提案の起点となったのは、欠席した星野委員からの代理メッセージ。木村EMが代読するかたちで「観光事業に携わる限り、自然災害による修繕は避けられない。重要なのは日常の点検と記録、その情報を踏まえた対応体制の整備。エリアマネジメント法人・行政・協議会で基本的考え方と仕組みを共有する場として、専門委員会の設置を提案したい」との趣旨が伝えられました。
専門委員会の役割としては、景観インフラの維持管理に関する具体的な検討、基金の取り崩しに関する事前協議、修繕計画の策定、評価委員会への報告・上程の4点が整理されました。委員長には田中委員が就任。「評価委員会は年2回開催のため、緊急の判断が必要な場面では機動性に欠ける。専門委員会で景観インフラに関する専門的判断を迅速に行える体制を整えたい」との趣旨が共有されました。
田中委員からは「建築・土木の専門家として、景観インフラの維持管理が長期的に持続するよう、評価委員会の皆様と連携しながら進めていきたい」との所感に加えて、「景観インフラ修繕計画を台帳化し、修繕の平準化を意識して運用すること、また道路・照明だけでなく、緑・サイン類・デジタルサイネージ・ストリートファニチャーまで対象範囲を広げて積極的に投資していくこと」が方針として共有されました。あわせて、専門委員会は少人数のコアメンバー構成で、メンバーを毎回入れ替えずに一貫性を保つことが望ましい、との運用観も提示されました。
(4)基金の取り崩しルールの明確化について
落雷被害への対応における基金取り崩しの経験を踏まえ、取り崩しルールの明確化が議論されました。星野委員からの代理メッセージでも「ルールで縛りすぎず、中長期的な健全性と迅速な対応のバランスで見極める設計が大事。投資の必要性は、収益動向を踏まえ、情報開示して意思決定すること」との運用観が示されており、ルール設計の柔軟性が重視されました。
基金取り崩しの原則として、まず事前協議を基本とし、景観インフラの修繕に関わる取り崩しは専門委員会の事前審議を経ることが整理されました。災害等の緊急対応で事前協議が困難な場合は事後の評価委員会への報告で代える例外運用を許容し、基金の取り崩し・収支はすべて毎回の評価委員会で報告して透明性を担保します。
合わせて、迅速性を担保するための仕組みも議論されました。年100万円の予備費を上限とする「委員長先決事項」の枠組みを設け、低額の緊急修繕は委員長判断で先行決定、目安額を超える大型案件は臨時委員会を開催する方針です。山下課長からは「先決事項の目安金額を年度初めに決めておくとよい」との提案も寄せられました。
「基金取り崩しの仕組みを明確にすることは、評価委員会の役割として最も重要な部分の1つ。今回ルールを明確化することで、今後の運用が堅牢になる」との位置づけが共有されました。
・委員からの議論
〜星野委員要旨〜
星野委員からの代理メッセージとして、まず照明器具修繕に関して「観光事業に携わる限り、自然災害による修繕は避けられない。重要なのは日常の点検と記録、そしてその情報を踏まえた対応体制の整備」との認識が共有されました。CRMキッチン(顧客感想システム)には海外宿泊客からも照明不具合の指摘が寄せられており、宿泊客・夜間日帰り客からも早期対応を望む声があるとの実情も伝えられました。
基金運用については、「長期的な取り組みであるからこそ、基金運用のあるべき姿を慎重に議論してほしい。ルールで縛りすぎないことが大事。中長期的な健全性と迅速な対応のバランスで見極めるべき」と提言。これを担保する具体策として、「エリアマネジメント法人・行政・協議会で基本的考え方と仕組みを共有する場として、専門委員会の設置」が提案されました。
〜田中委員要旨〜
専門委員会委員長就任にあたり、「景観インフラは『作って終わり』ではなく『育てていくもの』。リニューアル整備の品質を持続させるためには、日常的な点検・軽微な補修・大規模修繕を計画的に組み立てる必要がある」「ファシリティ・マネジメントの視点で、年次点検の仕組みを確立し、長期的な修繕計画を策定していきたい」と方針を共有しました。
修繕の範囲については「道路・照明だけでなく、緑・サイン類・デジタルサイネージ・ストリートファニチャーまで対象範囲を広げて、積極的に投資していくべき」と、景観の総体を視野に入れた運用観を提示。
対外発信に偏りがちな状況への課題提起もありました。「対外発信は重要だが、地元への発信強化も同等に大事。地元の本音や盛り上がりが流れていく状態を作るために、温泉街内での施設・イベント情報の物理的な見える化——ファサード活用、バナー、写真掲示などで蓄積を視覚化すべき。国道316号の通過交通に対して、現在進行中の企画を周知強化する余地もある」と、地域内コミュニケーションの強化を提言しました。
〜高橋委員要旨〜
メディア視点から、落雷被害対応について「ナイトタイムエコノミーとしての照明復旧は重要。修繕→顧客集客→基金増の好循環につながる」と評価。一方で「ハード・ソフト混在で費用規模の判断が難しいケースもある。景観施設の維持が基金の本来目的なので、それ以外の用途は別財源確保を検討すべき」と、運用設計上の論点も提起しました。
土木学会デザイン賞最優秀賞の受賞については「メディアにとっても大きなトピック。Discover Japanとしても、この受賞を切り口にした紹介企画を検討したい」と、メディア展開の方向性を共有。Discover Japan山口に掲載されたコンテンツについても「本に掲載されたコンテンツはカルピスの原液のようなもの。様々な用途に転用可能で、インバウンドの富裕層は普遍的で本質的なストーリーを求めるので、多言語化を強く推奨したい」と、コンテンツ資産の活用観を示しました。
〜のかた委員要旨〜
旅ジャーナリストの立場から、落雷被害対応の意義づけに踏み込みました。「スクリム階段の夜間照明は、温泉街イルミネーションの本当のシンボル。修繕遅延によるメディア・旅行者の失望はかなりある」と現場感覚を共有。
そのうえで、対応そのものを情報資源化する提案を行いました。「『照明といえば長門』というブランド化が可能。日本初の照明計画付き街づくり、小電力での美しい景観、SDGs・スマートシティとの連携——こうした切り口で照明を視察対象化していくこともできる」「点検の様子や試行錯誤も発信ネタになる。隠すのではなく、苦労を含めた情報発信がファン増加に繋がる。長野県の他温泉地もすでに長門湯本を参考にし始めている」と、発信の射程を広げる方向性を提案しました。
専門委員会の運営についても、「6月・12月だけの機械的運用ではなく、臨機応変な対応が肝心。地元の現状をよく知る人たちを含めた構成を意識してほしい」と運用面の提言を寄せました。
〜林委員要旨〜
「第4回にして初めてリアルで会えた——これがコミュニティデザインの観点から、いかに大切かを実感している。対面の場でしか伝わらない議論の質感がある」と、対面開催の意義を強調。
専門委員会の設置については「機動性と専門性を両立させる仕組みとして優れている。評価委員会が大きな方向を示し、専門委員会が具体的な実装を担う——この役割分担はコミュニティデザインの観点からも理想的」と評価しました。
〜中尾委員要旨〜
専門委員会の実体性について「臨時委員会を開いても、現場を見ていない委員だけでは適切な判断ができない。現場を見られる専門家を入れた仕組みと、スピーディーでシンプルな判断フローの両立を求めたい」と運用面の核心を指摘しました。
基金の使い方については「修繕だけでなく、前向きな投資で温泉地を進化させるべき。台帳管理は当然として、ネガティブ対応だけでなくポジティブな魅力創出投資も並行して進めてほしい」と提言。具体例として、河川公園の足湯については「冬季の温度調整コストが高い。草津のような潤沢な湯量がない中での温度差管理は燃料コスト増になる。温度差がある2箇所を年間通じて管理するより、夏季に絞って湯量と温度を確保する運用の方が効率的では」との運用見直しも示されました。
事業計画案については「項目や費用感の妥当性以上に、『次のステップ・ステージを想像できるマインド』が表れているかが重要」と、姿勢としての評価軸を提示しました。
なお、宿泊者数の想定について長門湯守 大谷代表からは「25万人は結構高い数字。グループ全体がまだ完全に戻っていない中で、20万人レベルの計画の方が安心ではないか」との指摘もあり、稼働率7割を想定した運営目線が共有されました。
〜梅川委員長 発言要旨〜
梅川委員長は、第4回の議題を総括しました。
「今日この日は、長門湯本温泉のまちづくりにとって、複数の重要な節目が重なった日となった。土木学会デザイン賞最優秀賞の受賞、評価委員会として初めての対面開催、専門委員会の設置、基金取り崩しルールの明確化——これらは、長門湯本温泉の運営体制を第1段階から第2段階へ進める重要なマイルストーン」。
「整備の品質が公的に最高評価を受けたことを土台に、これからは『運営の品質』を磨いていくフェーズに入る。専門委員会と評価委員会が両輪となって、長門湯本温泉のこれからの10年を支えていきたい」と、第2段階への移行を宣言する総括となりました。
閉会
第4回 長門湯本温泉みらい振興評価委員会は、約2時間半にわたる議論を経て終了しました。
この日に確立されたこと:
・土木学会デザイン賞2021最優秀賞の受賞:長門湯本温泉のリニューアル整備の品質が公的に最高評価
・評価委員会として初めての対面開催:3回オンラインを経てリアルでの議論が実現
・専門委員会の設置:景観インフラに関する迅速な専門判断の仕組み
・基金取り崩しルールの明確化:事前協議の原則、専門委員会の事前審議、緊急時例外、記録透明化
・第2段階への移行宣言:「整備の品質」から「運営の品質」へ
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新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、そして大規模落雷という想定外の災害を経験しながらも、長門湯本温泉のまちづくりは、運営体制の本格的な整備という重要な節目を迎えました。土木学会デザイン賞2021最優秀賞という外部からの最高評価を土台に、専門委員会という新たな仕組みを得て、長門湯本温泉のこれからの10年・20年を支える運営体制が、この日、確かに形を取り始めました。次の第5回(2022年7月)では、この体制で初めての本格的な年度評価が行われていくことになります。

































































































