長門湯本REPORT:第10回長門湯本温泉みらい振興評価委員会が開催されました
2024年11月2日(土)、第10回目となる「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」が開催されました。当日は大雨により、長門市内では高齢者避難情報および河川洪水警戒レベル3が発令されている状況下での開催となりました。
これは、外部の専門家等が長門湯本温泉の観光まちづくりを検証し、その知見をまちの未来に生かすために、長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例に基づき、年に2回開催されるものです。
■ <長門湯本温泉みらい振興評価委員会>
長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例(令和元年12月26日条例第16号)に基づき設置され、第三者評価とするため外部の有識者で構成。長門湯本温泉の持続的な観光まちづくりを進めるため、本基金の使途の透明性の確保および運用の適正化を狙いとする。
長門市およびエリアマネジメント法人(長門湯本温泉まち株式会社)が本基金を財源として実施する事業を評価するとともに、持続的な観光まちづくりにつながる事業に要する本基金の処分について、市長に意見を述べる。
※この会議は原則公開となっており、会議の模様はyoutubeにて全編が公開されています。
評価委員会には以下のメンバーが参加しました。
| 氏名 | 所属・分野 |
長門湯本温泉みらい振興評価委員会
| 梅川 智也 | 國學院大学/学識経験者 |
| 高橋 俊宏 | 株式会社ディスカバージャパン/メディア |
| 田中 智之 | 早稲田大学 理工学術院/建築・空間デザイン |
| のかたあきこ | 旅ジャーナリスト |
| 星野 佳路 | 星野リゾート/観光業 |
民事業者
| 長門湯本温泉まち株式会社 代表取締役 伊藤 就一 | 民間事業者 |
| 長門湯本温泉まち株式会社 エリアマネージャー 木村 隼斗 | 民間事業者 |
| 長門湯守株式会社 共同代表 大谷 和弘 | 民間事業者 |
事務局
| 長門市長 江原達也 | (災害対応のためオンライン参加・途中退出)
審議・検討事項
(1)長門市の観光振興に関する取組および基金に関する事項について
(2)専門委員会からの見解報告について
(3)長門湯本温泉まち株式会社の取組および2025年度事業計画案について
(4)長門湯守株式会社の取組について
(5)各委員からの評価・提言
開会
はじめに、江原達也市長より開会の挨拶が行われました。
〜挨拶要旨〜
市長は「本日はお忙しい中、また大雨で足元の悪い中、お集まりいただきありがとうございます。この評価委員会も今回で10回目を迎えました。この11月は長門湯本温泉、そして長門市全体でも観光客を迎えるトップシーズン。長門湯本温泉でもおとずれ橋を散策する観光客の姿を見るにつけ、これまで皆様と一緒に取り組んできた成果を実感しているところです」と挨拶。
「今年12月の人気温泉地ランキングでは、昨年の29位から上がるのか下がるのか、大変ワクワクしている状況です。メディア露出も大変増えており、本当にありがとうございます。本日の会議では、長門市とまち会社の取り組みや事業計画案について、ぜひ皆様の知見をお借りできればと思っております」と、節目の回への期待を語りました。
(1)長門市の観光振興に関する取組および基金に関する事項について
長門市観光政策課より、令和6年度の取り組みと来年度の事業計画、基金に関する事項について説明がありました。
〜報告要旨〜
観光プロモーション: 福岡エリアでのPR活動を継続し、9月には「福岡女子旅EXPO」や「六本松蔦屋書店」へのブース設置を3段階で展開。第2弾として、来月に長門フードアンバサダー・タサン志麻氏のトークショーを開催予定。
アクセス利便性の向上(二次交通の進展): 高速バス「おとずれ号」のダイヤ改正、山口宇部空港直行便の民間予約フォーム化、観光タクシーの新規運行などを実施。特に「新山口直行便」は、1日平均の利用者数が増加(30.4人)したことで料金改定を行い、市の支援から民間タクシー事業者の自走運行への移行を達成。
インバウンド対策: 台湾向けInstagramのフォロワー数が1万人を突破。また、閑散期向けのインバウンドバス補助の創設や、今年度補正予算1,200万円を確保した「多言語化・キャッシュレス決済対応」への事業者補助制度の運用を開始。
来年度(令和7年度)の事業計画案(2025〜2027年重点期間): 大阪・関西万博での5自治体連携による「特産品おにぎり」の提供出展や、令和8年山口デスティネーションキャンペーン(DC)に向けたJR等との連携、伊上地区アウトドアツーリズム拠点の2カ年でのハード整備などを予定。
具体的な取り組みの5つの柱:
山口DCを見据えた交通連携と利便性向上、2. 欧米豪への戦略展開とインバウンド体制強化、3. シビックプライド醸成や「子ども湯道教室」などの文化観光推進、4. 公民での財源確保を含む景観インフラの持続的整備、5. DMO機能を活用したデータ分析による情報発信の強化。
入湯税・基金の状況: 今年度の入湯税は好調に推移(8月まで前年比104%、9月以降110%試算)し、約2,863万円を見込む。エリアマネジメント等の予算(2,980万円)に対し、現時点で約116万円の不足を見込むが、年度末の基金取り崩しは最終数字を確定したうえで委員長に確認し事務を進める方針。
(2)専門委員会からの報告について
専門委員会は9月26日・10月24日の2回開催され、田中委員長より見解が報告されました。
〜専門委員会の見解〜
専門委員会は9月26日・10月24日の2回開催され、田中委員長より見解が報告されました。
- メンテナンスの徹底と長寿命化
日々のメンテナンスを徹底し、定期的な点検を実施することで景観インフラの器具・設備等の長寿命化に取り組むべきとの提言。「10年に1回などの大きな波をなるべく抑える考え方で、日頃からの点検を工夫し、改修コストの平準化・ピークオフをすべき」。
- VE(バリュー・エンジニアリング)手法の導入
大きくかかってくるコストに関しては、VE(Value Engineering)という建築・土木でよく使う手法を導入し、価値を保ったままコストコントロールを行いながら、景観インフラの改修更新費用を精査することを提案。「当初想定した修繕料の抑制のための検討が必要」と述べました。
- 観光振興財源の確保と基金の積み立て
「コロナ禍を経た団体客の大幅減少、旅行スタイルの変化に伴う宿泊施設の高付加価値化など、観光需要や供給環境が変容している。様々な手法を用いた安定的な観光振興財源の確保と、確実な基金の積み立てに向けた検討が必要」と提言。
梅川委員長は、特に3点目について「入湯税は頭数で積み上がってくる構造のため、入湯客数が大幅に増えていく見通しが立てにくい。数で追えないなら、質を変えていく、高付加価値化に対応していくという入湯税の制度そのものを少し考えていかなければならないのではないか」と補足しました。
(3)長門湯本温泉まち株式会社の取組および2025年度事業計画案について
長門湯本温泉まち会社伊藤代表、木村エリアマネージャーより上半期(4〜9月)の実績と下半期の見通しが報告されました。
〜伊藤代表報告要旨〜
長門湯本温泉まち株式会社 伊藤代表取締役より、上半期(4〜9月)の実績と下半期の見通しが報告されました。
上半期の主な取り組み
・JAL・長門市と連携したプロモーション企画の継続
・9月:「うつわの秋」を盛大に開催
・10月(下半期):恒例の「ごろ寝バー」、今年は鯉のぼりに代わりドラゴンが泳ぐ仕掛けで散策を彩る
・下半期のメインとなる「うたあかり」は、各方面の協力を得て盛大に開催の見込み
・交通事業者の連携、旅行会社のツアー企画なども進行中
「閑散期対策の柱である2月の『うたあかり』は、今年は本当に盛大に開催できると見込んでいる」と語りました。
〜木村エリアマネージャー報告要旨〜
1. 宿泊データの構造変化と分析
現在の宿泊者数はコロナ前比で80%台の推移に留まる一方、1部屋あたりの利用人数(同伴係数)がコロナ前後で大きく変化しています。コロナ前は1部屋あたり約3人で団体客主体の構造でしたが、コロナ後は旅行の個人化によりこれが大幅に減少しました。
しかし、同時に各旅館の高付加価値化が進んだことで客室数自体は増加しており、結果として「総量・頭数(客数)は伸びにくいが、部屋はしっかりと稼働している」という新たな構造が生まれていると分析されました。
2. まち会社の経営・マーケティング戦略
この構造変化に対応するため、まち会社は客数ではなく「RevPAR(販売可能客室数あたり客室売上)」の最大化を最重要目的に掲げ、客室稼働率と客室単価の最適化を進めます。
インバウンド戦略:初訪日層ではなく、訪日経験が豊富で知的好奇心の高いリピーター層をターゲットに据えます。「恩湯」や「萩焼」、川床といった地域の深い文化価値を丁寧に伝えていくとともに、東アジア市場および国内市場における単価アップを狙ったPRとイメージ醸成を推進します。
一体的な発信体制の構築: 観光コンベンション協会や地域全体で動画素材、メディアネットワーク、広報戦略を共有するため、新たに「PR会議」を立ち上げました。企画立案の段階から、統一的かつ効果的な情報発信に取り組みます。
3. 2025年度事業計画案の方向性
伊藤代表より、過去5年間の成果を踏まえた2025年度の事業計画案が上程されました。予算規模は、入湯税加算分2,910万円に、新規事業であるエリアマネジメント事業負担金330万円を加えた合計額となります。主な項目は以下の通りです。
事務局経費:これまでの成果に基づくフィードバックと、イベント開催時の人手不足への対応を含めて予算を積み上げました。
情報発信:新設されたPR会議と緊密に連動し、ターゲットを明確化したうえで、発信素材の提供や連携を強化します。
コンテンツ造成:攻めの姿勢をとる「プロジェクトモード」を継続します。来年度はコンセプトブックの作成、および「長門湯守(家守)」と連携した新規事業者の誘致活動を推進します。
インフラ日常管理:電気料金の高止まり傾向を勘案し、日常の照明代などの予算は据え置きとしました。
2025年度事業計画案:伊藤代表より2025年度事業計画案について上程説明がありました。
事務局経費:過去5年の成果を踏まえたフィードバック、イベント時の人手不足対応含めて積み上げ
情報発信:PR会議連動、ターゲット明確化、発信素材の提供連携
コンテンツ造成:プロジェクトモードを継続。来年度はコンセプトブック作成、山森と連携した事業者誘致活動を推進
インフラ日常管理:照明代の高止まりに伴い据え置き
合計:入湯税加算分2,910万円+エリマネ事業負担金(新事業)330万円で上程
(4)長門湯守株式会社の取組について
長門湯守株式会社 大谷共同代表より、半年間の取り組みが報告されました。
〜長門湯守株式会社 大谷共同代表 発言要旨〜
「恩湯の休憩室」の開放とオリジナルグッズの展開
アイスクリームやジュースなどを気軽に楽しめる「音の休憩室」を自由に使えるよう開放。グッズ販売としてはクラフト温泉(音の岩盤からミネラルを抽出した飲料、音のハイボールなど)や音のTシャツなどを徐々に増やしているとのこと。「身体にいいということで、風呂前に飲んで、風呂に入って、また飲んでもいいよということでやっています」と紹介されました。
「1日湯治プラン」の開始(2025年度予定)
オリジナルの浴衣、温泉街全体で使えるチケット、地図などを組み合わせて、好きなだけ温泉に入れる1日湯治プランを2025年度から開始予定。
縁側の活用による景観形成への貢献と課題
「恩湯文庫」として縁側で自由に本を読める場や、音縁側オセロを展開。「外と恩湯の休憩室の繋がりが非常に作りやすくなった」と語られました。一方、広場の活用は今後の課題として残っているとのこと。
150年ぶりとなる「新春献湯式」の復活
最も時間を割いて紹介されたのが、150年ぶりに復活予定の新春献湯式(しんしゅんけんとうしき)でした。新年の大寧寺にて、神様に恩湯のお湯を捧げる儀式で、大寧寺との連携で復活が進められています。「これがいいのが、大寧寺と深川萩と恩湯が繋がる儀式となるということです。開山堂に湯を運び、ファイブセインツ(歴代5住職の位牌堂)の前に捧げる。坂倉新兵衛窯の器を使い、片手桶を発明していただいて、源泉から汲み上げた湯を運ぶ」」歴代5住職は夜な夜な出かけるという言い伝えから、棒(杖)や靴も用意されており、正月にお湯でこれらを清める伝統も復活させる予定。「秘儀とする」という岩田住職の提案を受けて、非常にクローズな世界での開催を予定しているとのこと。「儀式を復活させながらも、新しい文化として続けていけたら」と展望が語られました。
インナーマーケティングの強化と市民還元の拡大
2025年からはインナーマーケティングにも力を入れる方針。市民割の拡大として、これまで夜のみ500円だったものを、11月から営業時間中(10時〜22時)市民500円に拡大。場所学習・住民説明会・働き手向け学習会なども継続実施し、地元テレビ・地元紙との連携で音の魅力を地域内に発信していく予定です。「最終的には『生活文化の創造』」と締めくくられました。
(4)次の10年(2026〜2030年度)に向けた評価と提言
最後に各委員より、今期および次の10年に向けた評価・提言が発表されました。
〜高橋委員 発言要旨〜
高橋委員は、文化観光・文化資本の重要性に焦点を当ててコメントしました。
「文化観光と言われるが、まさに文化資本だと思う。大谷さんの話、文化資本という形にないものを徐々に皆さんが価値と感じて、形にしていこうとされている。献湯式を江戸時代から復活させるという話は素晴らしい。地元の人たちがそこをこう改めて再発見して学んでいくという方向性も非常に本質的でいいと思う」と評価。
RevPARの構造変化にも触れ、「これからは部屋数を減らしながら広くしたりして、部屋単価が上がっていく方向。そういう人たちは知的好奇心があり、地域にちゃんとリスペクトを持ってくれる。そういう人たちを巻き込んで、ファンを増やしていく方向は国内外含めて目指すべき」と述べました。
そのうえで自身の専門領域である情報発信については「同じような情報発信を同じところでやるのが一番無駄。コンセンサスを取りながら、それぞれの持ち場・立場・予算を共有しながら的確に発信する。PR会議は非常に重要なので、ぜひしっかりと進めていただきたい」と提言しました。
〜田中委員 発言要旨〜
田中委員からは3つの提言がありました。
1点目は「定番の風景作り」。「旬が連続として1年を通していろんなイベントが彩りを添えているが、その横串を刺す『長門湯本といえば誰もが思い浮かべる風景・アクティビティ』が、あるようで少し弱い。草津の湯もみ、伊香保の階段と温泉饅頭の煙のような、アイコニックな風景作りを。長門ではおそらく音連川を中心とした回遊になると思うが、1年を通した定番風景をどう作るか、もう一度議論して強化していくべき」と提言。
2点目は「広場の活用」。「広場の卓球は素晴らしいが、広場の活用法・利活用がもう少し活性化されるといい。川床は素晴らしい試みだが、私が熊本で実際に行っている『広場家具』のように、くの字型でゴロゴロ転がせる椅子や、川床の陸版とも言える陸床のようなオリジナル家具をデザインして、川も陸もうまく繋ぎながら多様な居場所を展開できる」と、自身の熊本での実践事例を紹介しながら提案。
3点目はコンセプトブックの「切り口」。「コンセプトブックを今検討されているのはいい試みだが、単なるドキュメントやパンフレットでは全然面白くない。踏み方・切り口が大事。時間という切り口、スケールという切り口、10個ぐらいの面白いエポックを近隣に紹介するなど、事前にお話したが、ご協力するのでぜひ一緒にやっていきましょう」と語りました。
〜のかた委員 発言要旨〜
のかた委員からは2つのテーマでの発言がありました。
1つ目は「アクセス改善の継続」について。
「おとずれ号は3年目を迎えているが、初年度から乗客を増やさなければという課題は皆で共有してきた。私もずっと機会があれば乗車して『今日は何人かな』と確認してきた。最近、機会を得て西鉄バスの本社に取材させてもらい、旅行雑誌で2ページ紹介させてもらった」と、自らの取材活動を紹介。
「マスタープランがしっかりしていて、公民連携の温泉地である、星野リゾートを含めた旅館も魅力的な取り組みをしている。だから西鉄バスとしても応援したいし、山口にお客さんを送りたい―という経緯から、おとずれ号は誕生した。車内にはシートポケットに湯本温泉のためのガイドブックが置かれ、その充実度は半端ない。そういう温泉直行バスは私は乗ったことがない。町株さんや写真撮影の白井さんを含め、ワクワクさせながら湯本まで送り届けるバスになっている」と評価。
新山口直行便については「これまで補助金で走っていたものが、自走できるようになって、利用率も高くなって、値段も上げて自分たちでやれるという話はすごくいいこと。私もこの便に乗ってみて、8人乗りで人気が高い」と評価しつつ、「車内にはおとずれ号ほどのガイドブックがなく、狭い空間でみんな遠慮しがちに過ごしている。星野リゾートの取材で函館のバスでは、車内で地元の中学生・高校生の車内アナウンスを流す試みがあった。子どもたちのアナウンスを少し入れると、直行便がさらに楽しくなる」と提案しました。
2つ目は「文化観光と場所学習」について。
「市役所さんも大谷さんも言われていた場所学習は非常にいい。地元の温泉をずっと守ってきた大寧寺が舞台で、子どもたちが学んでいる写真は微笑ましい。SNSで発信されている動画―伊藤代表の奥様の伊藤昌代さんがカメラマンとしての特技を生かして撮影されたもの―が、めちゃくちゃ素敵で、子どもたちのワクワクが心まで伝わってくる」と評価。
「今日朝8時半に大寧寺で岩田住職にインタビューさせてもらい、『こういう学習は早ければ早い方がいいか』と聞いたところ、早い方がいいというお話だった。故郷の風景として心に残るし、子どもはピュアな心でスポンジのように吸収する。大人になって忘れていても、ふと思い出して『故郷でああいう風景だった、こういう体験をさせてもらった』となる。故郷を愛する気持ち・PRする気持ちが芽生える」「子どもの教育は大事だし、お母さんたちも一緒についてきたりする。インナーマーケティングの取り組みも理想的に進んでいると感じている」と述べました。
最後に、この10年の歩みについて触れ、「2015年に恩湯が解体されることからプロジェクトが始まり、2016年にマスタープランで星野リゾートが入り、そこから組織作りをされて長門湯本ができてきた。10年積み重ねてきたものがあって、外からのファンも多いし、地元は地元で音湯や大寧寺、川沿いの昔から変わらない景観をまた見ている」「SOILさんなど新しい事業者も移住されて、南条踊りに参加されている。地元の人の繋がり、そういう人たちから旅行者にお話があると、嘘じゃない・本当にこの人たちが好きなんだなというのが伝わる」と、長い視点での評価を語りました。
〜星野委員 発言要旨〜
星野委員は、まずまち会社の戦略全体について評価しました。
「今日の取り組みを聞いていても、戦略の大方針はすごく正しい。これだけ正しく観光の戦略を体系化して取り組んでいる地域は、日本にはほとんどない事例。成果が出る時は一気に出る。病気の薬と同じで、飲んですぐ効く薬はなく、蓄積してしばらくして急に回復してくる。観光戦略も、正しい戦略を打ち続けて、ぶれずにやり続けることで、ある日突然成果が現れ始める。紆余曲折はあっても、ぶれずにやり続けることが大事」と励まし。
「木村さんは、私が長門に初めて来た時、市にいらっしゃった経済産業省の役人だった。その時に比べてかなり優秀になりました」と笑いを誘いつつ、「Stapleさんの誘致は満塁ホームランに近い。マスタープランのど真ん中にあった、なんとかしなきゃいけない旅館を、いきなりマスタープランの目玉商品に変えた。負だったものを一気にプラスに変える効果がある。山口銀行さんが絡んで地元金融のファイナンシングで成し遂げているわけで、なんとしてもこのStapleプロジェクトは成果に導いていくことが重要」と述べました。
RevPARの考え方についても「同伴係数が落ちて稼働は上がっている。あとは単価を上げて、稼働×単価のRevPARを最大化することがマーケティングの最大の目的。日本の温泉地にRevPARを導入するだけで、正しい経営判断ができるようになる」と強調。
そのうえで戦略の微調整の重要性を提言しました。
「大戦略はぶれずに継続するのが大事だが、やっていることの数が多いので、当たっているものと外れているものがある。外れているものは『誰の責任だ』となりがちだが、これだけ多くを動かして全部当たることはない。外れているものはさっさと微調整するのが重要。躊躇なく微調整することも、大きな戦略を継続する上で大事」。
具体的な微調整候補として、おとずれ号(西鉄高速バス)の戦略修正を提案しました。「ダイヤ改正以降、空港に寄らないバスになっており、インバウンドにも東京から来た人にも乗りにくい。朝早く来るため、東京からの1便では間に合わず、福岡で前泊が必要。完全に福岡からの日帰りを狙う形になっており、長門湯本温泉の観光戦略との不一致がある。これが伸び悩む理由でもあるし、我々が力を入れにくい理由でもある。福岡を狙う理由は国際空港だからであり、宿泊者を狙うバスとして戦略修正をすべきではないか」と提案。
加えて、ライドシェアと自動運転の早期検討も促しました。「ライドシェアは地方からやるべきというのが3年前から私の主張で、当時は怒られたが、今は国会議員でも賛成する人が出てきた。タクシー運転手減少で必ずどこかでやらなければならない時代、一早くやる自治体が一番得をする」「バスも自動運転になる。サンフランシスコでは運転手がいないタクシーが走っている。路線で結ぶバスは自動運転に最もしやすい。福岡から長門、長門駅から長門湯本温泉などを自動運転で走らせる準備を常に頭に入れておくべき」。
さらに連泊推進とレストラン予約のDX化を提言しました。「連泊はキー。日本の温泉地で連泊が少ないのは大きな問題で、長門は『外湯天国』という素晴らしいコンセプトがあるので連泊しやすい温泉街になる可能性がある。連泊推進をするだけでRevPARが全然変わる。日本の旅行消費額は1泊が多いので交通費比率が高いが、連泊すれば旅行者にとっては滞在比率が高くなり、観光産業のカーボンニュートラル化にも繋がる」「ただ、連泊推進にはレストランの確保が必要。素泊まりで予約することへの恐怖を解消するため、宿泊予約時に1日目・2日目・3日目のレストラン予約ができる観光DXを目指すべき。長門の宿に予約する時、1泊目は宿の中、2泊目はさくら食堂で食べる―を予約で確定できる仕組み。10%・15%が連泊となれば、レストラン側も売上の見込みが立つ状態になる」と、具体的な未来像を語りました。
閉会にあたり、長門市観光スポーツ文化部 伊藤部長より挨拶がありました。
「本日は委員の皆様方からたくさんのご意見をいただきました。当初市長が最後までおりまして皆様とお話ができる予定でしたが、こういう状況で大変失礼をいたしました」と災害下での開催を詫びつつ、「皆様の貴重なご意見を参考に、長門湯本温泉が魅力ある観光地として市内外から高く評価いただけるよう、力強く進めたい」と述べました。
「観光スポーツ文化部は4月に発足したばかりの新設部署で、私はど素人の部長として担当しています。今、肌感ですごく思っているのが、もう少しまち会社さんと協力を詰めてやっていきたいということ。なるべく私は近づこうとしているんですけれども、木村さんが避けられていまして」と笑いを誘いつつ、「5年を過ぎ、次の展開をするには、行政も民間もという公民連携が大前提。一緒にやっていきたい」と、節目を踏まえた所信表明で結びました。
閉会
以上、約2時間にわたる議論を経て、第10回「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」は終了しました。大雨・避難情報発令という困難な状況下で、市長・委員長・専門委員を含む多くの参加者がオンラインから参加するという、これまでにない開催形態となりましたが、観光プロモーション、アクセス改善、インバウンド、専門委員会の3つの見解、まち会社・湯守の半年の取り組み、そして次の10年に向けた財源・連泊・DXの議論まで、内容は幅広く充実したものとなりました。
「正しい戦略を打ち続けることで、ある日突然成果が現れる」―星野委員の言葉が、この5年の積み重ねを的確に表していました。長門湯本温泉のまちづくりは、節目の10回を経て、次の段階へと歩みを進めていきます。

































































































