長門湯本REPORT:第9回長門湯本温泉みらい振興評価委員会が開催されました
2024年6月3日(月)、第9回目となる「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」が開催されました。
これは、外部の専門家等が長門湯本温泉の観光まちづくりを検証し、その知見をまちの未来に生かすために、長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例に基づき、年に2回開催されるものです。
■ <長門湯本温泉みらい振興評価委員会>
長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例(令和元年12月26日条例第16号)に基づき設置され、第三者評価とするため外部の有識者で構成。長門湯本温泉の持続的な観光まちづくりを進めるため、本基金の使途の透明性の確保および運用の適正化を狙いとする。
長門市およびエリアマネジメント法人(長門湯本温泉まち株式会社)が本基金を財源として実施する事業を評価するとともに、持続的な観光まちづくりにつながる事業に要する本基金の処分について、市長に意見を述べる。
※この会議は原則公開となっており、会議の模様はyoutubeにて全編が公開されています。
評価委員会には以下のメンバーが参加しました。
| 氏名 | 所属・分野 |
長門湯本温泉みらい振興評価委員会
| 梅川 智也 | 國學院大学/学識経験者 |
| 高橋 俊宏 | 株式会社ディスカバージャパン/メディア |
| 田中 智之 | 熊本大学大学院/建築・空間デザイン |
| のかたあきこ | 旅ジャーナリスト |
| 林 千晶 | 株式会社Q0|コミュニティデザイン |
民事業者
| 長門湯本温泉まち株式会社 代表取締役 伊藤 就一 | 民間事業者 | 出席
| 長門湯本温泉まち株式会社 エリアマネージャー 木村 隼斗 | 民間事業者 | 出席
| 長門湯守株式会社 共同代表 大谷 和弘 | 民間事業者 | 出席
事務局
| 長門市長 江原 達也 | 出席
審議・検討事項
(1)令和5年度 長門市の取組結果について
(2)令和5年度 長門湯本温泉まち株式会社の取組結果及び観光地経営に関するモニタリング結果の報告について
(3)令和5年度 観光地経営に関する評価について
開会
まず冒頭に、江原達也 長門市市長より開会の挨拶が行われました。
〜市長 挨拶要旨〜
市長は「ゴールデンウィークなど、コロナ禍が明けて出かける人たちで大変な賑わいとなっていた」と振り返り、令和5年の観光統計について報告しました。「長門市全体の観光客数は令和元年の約241万1,000人以来の200万人超えとなり、約201万1,000人まで回復した。宿泊者数も約38万3,000人と前年比2.2%の増加となった」と述べました。
長門湯本温泉については「一部ホテルの施設改修による休業期間もあったものの、閑散期対策の効果である『うたあかり』や『ながと泊まっ得キャンペーン』などの効果もあり、ほぼ同数で落ち込むことなく推移した」と続けます。
「これから長門市を山口県西部地域のハブ機能として強化していきたいと考えており、その中心として長門湯本温泉に大変期待している」と述べ、開会の挨拶としました。
(1)令和5年度 長門市の取組結果について
長門市観光政策課より、令和5年度の取組状況について報告がありました。
〜報告要旨〜
組織改編:観光スポーツ文化部の創設
令和6年度より、従来の観光政策課に教育委員会所管だったスポーツおよび文化部門を統合した「観光スポーツ文化部」が新設されました。これら3分野を一体的に活用することで、関係人口の増加と地域交流の促進を図る体制が強化され、対外的にも市の本気度を示す組織改編として委員から注目を集めました。
みらい振興基金の状況と積立への課題
令和5年度の積立財源(駐車場指定管理料収支差額、預金利息、入湯税加算分を含む)は合計2,674万1,984円でした。これに対し、エリアマネジメント事業費等として2,830万円を支出したため、差し引き158万200円の財源不足が発生しました。この不足分は入湯税の通常分から充当し、基金からの取り崩し額を入湯税加算分の2,671万9,800円に留めたことで、令和5年度末の基金残高は1,223万3,663円となりました。
2029年度に見込まれる大型修繕に向け、2028年度末までに4,500万円を積み立てる目標を掲げていますが、現時点での進捗率は27.2%に留まっています。この着実な積立に向け、①アフターコロナの需要情勢を踏まえた宿泊者数水準の想定について旅館組合等との議論を進めること、②観光客増加に向けた取り組みの強化、③現在の入湯税加算額(150円)以外の新たな財源確保策の検討、の3つの論点が提示されました。
インフラ日常管理と落雷改修の終結
昨年9月に実施された合同年次点検に基づき、専門委員会において年次修繕計画を策定しました。令和5年度の対応事項はすべて適時対応済みであり、県管理施設への報告や継続検討事項の整理も完了しています。現時点で長期インフラ回収計画に影響を与える事象はないと判断されました。
また、令和3年7月の落雷事故への対応として、これまで3期にわたり進めてきた約70基の照明器具改修工事に加え、今年度は避雷設備の設置工事(サージ対策)を実施中であり、これをもって一連の落雷復旧対応は一旦終結する見通しであることが共有されました。
観光プロモーションと国の高付加価値化事業への採択
プロモーション面では、福岡エリアでのイベント参加や六本松蔦屋書店でのブース設置、カメラメーカーとコラボしたフォトグラファーの招聘による撮影やWeb・映像発信などを展開しました。
さらに、国(観光庁)の「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」に採択され、キャッチコピーに「オソト天国 長門湯本温泉」を核とした個人滞在型の旅を掲げ、長門湯本をコアエリアに市全体で計9事業(令和5・6年度の2カ年、事業費総額11.4億円、補助金額5.9億円)の個別プロジェクトを推進していきます。
アクセス利便性の向上(二次交通の進捗)
各種直通バスの利用状況は伸びを見せており、西鉄高速バス「おとずれ号」は、今年4月のダイヤ改正で小倉南インター、美祢駅、長門湯本駅の3停留所を追加し、新山口駅との直行バスも運行を継続しています。山口宇部空港直行便は昨年8月〜1月に金・土・日・月限定で1日2往復運行され、令和6年度も同様の期間で運行を予定。今年2月に運行を開始した「長門周遊観光タクシー」は、主要観光地を経由して旅館のチェックイン時間に合わせた1日1便の予約制として運用されています。
インバウンド対策の成果と新規取り組み
令和5年度は台湾をターゲットに展開し、5月開設の台湾向けInstagramがフォロワー数7,000人を獲得したほか、山陰の観光説明会や商談会へ参加したことが報告されました。
令和6年度の新規取り組みとしては、団体旅行向けの閑散期支援である「インバウンドバス補助」の新設や、欧米市場へのプロモーション、海外メディア誘致、地元の多言語・キャッシュレス対応事業者への支援を行う「インバウンド誘客事業」を計画。6月補正予算が7月上旬に議会承認され次第、本格的に始動する方針です。
(2)令和5年度 長門湯本温泉まち株式会社の取組結果及び観光地経営に関するモニタリング結果の報告について
長門湯本温泉まち株式会社 伊藤代表取締役による組織・成果の概況報告に続き、木村隼斗エリアマネージャーが観光地経営モニタリングの6つの指標に基づく令和5年度の事業報告を行うかたちで進められました。
〜 伊藤代表取締役 報告:組織・成果の概況〜
5月14日の株主総会で役員改選を実施し、ホテル長門はらだ 原田雄三取締役が新たに就任。事務所も連携強化のため旅館組合内に移転しました。エリアスタッフに白石千里さん、旅館組合事務局長の瀧口さん、出光の岡崎さん(週末兼業)が加わり、人材体制も拡充。これらの蓄積と行政のシティプロモーションが結実し、昨年は温泉地ランキング29位(初の30位圏内入り)を達成し、「さらに高みを目指し10位以内を目指す」と報告。あわせてSOIL長門湯本温泉の開業に向けた取組や、観光庁事業の不採択後も自発的努力で「うたあかり」を継続実施する意向も共有されました。
〜木村エリアマネージャー 報告:6つの指標に基づくモニタリング結果要旨〜
1. RevPAR(収益性)の動向と閑散期対策
RevPAR(販売可能客室数あたり客室売上)は一貫した上昇傾向にあり、市場全体の回復傾向を踏まえ「コロナのせいにはできなくなってきた」と総括されました。一方で、2月における閑散期の客足の落ち込みが、引き続き温泉街全体の最大の課題として整理されています。
2. 新規投資・ローカルディベロッパー機能の進捗
新たな民間投資として「SOIL Nagatoyumoto」の開業に向けた動きが具体化しています。これは単なる宿泊施設の整備に留まらず、温泉街の日常と観光客の滞在が心地よく共存していくための新たな「起爆剤」として期待が寄せられています。
3. 従業員満足度と「しっちょき隊」のプログラム化
従業員向けの学習プログラムが、新たに「しっちょき隊」として正式にプログラム化されました(報告当日もメンバーが後方席に同席)。従業員アンケートの結果では、温泉街のイベントや活動に対する満足度が高く出ている一方、「エリアとして目指す姿の共有」についてはまだ意識の乖離がある点が率直に共有され、今後の課題とされました。
4. 生活者関与度(地元小学校での「湯道」授業)
地域住民や次世代との関わりとして、地元の小学校で3時間にわたる「湯道」の授業を実施しました。「誰のおかげで温泉に入れますか」という問いに対し、湯本の子どもたちが「神様」や「(大寧寺の)住職」と答えるなど、地域の歴史や文化背景が子どもたちへ着実に受け継がれているエピソードが紹介されました。
5. メディア露出とインバウンド戦略
メディア露出:世界的な旅行ガイドブック『ロンリープラネット』に、長門湯本温泉が初めて掲載されるという大きな成果が報告されました。
インバウンド戦略:知的好奇心の高い層をメインターゲットに据え、台湾市場を中心に「温泉(お風呂)の元に豊かな暮らしがある」という、地域の日常の風景やストーリーを丁寧に積み重ねて発信していく方針が示されました。
6. 事業の健全性(エリアマネジメント基本方針)
持続可能な運営体制に向けて、新たに「エリアマネジメント基本方針」の試作版が作成・配布されました。これは「まち会社として社会にどのような価値を提供したいのか」を言語化したもので、今後は行政や委員からのアドバイスを反映させながら、公民連携の強固な枠組みへと育てていく方針が共有されました。
■ 長門湯守株式会社の取組について
長門湯守株式会社 大谷共同代表より、半年間の取組が報告されました。
〜要旨〜
【新店舗の参入・地域連携・新規サービスの展開(要約)】
新パートナーの参入:「ひだまり食堂」の開店
立ち寄り湯「恩湯」の隣に、新たな飲食店「ひだまり食堂」が開店。同店はメディア『Discover Japan 山口』でも紹介され注目を集めており、店主の西川氏は約20年前に和歌山県から長門市へ移住。長門の漁港で水揚げされたアジの鮮度の高さに衝撃を受け、魚の魅力に惚れ込んだことをきっかけに移住し、現在は干物屋を営んでいます。「体に優しい干物で、体を元気に」をテーマに掲げ、朝9時から営業を行っています。
「クラフト温泉」を活用した地域飲食店との連携
クラフト温泉・恩湯(恩湯の岩盤からミネラルを抽出した飲料)を温泉街の飲食店でも提供してもらうべく、まち会社と連携して長門の名物料理開発を進める方針が示されました。
入浴者数向上に向けた多角的な新規取り組み
従来の入浴利用に留まらない、以下の新たな付加価値サービスや地域連携施策が示されました。
朝1番の恩湯貸切サービス: 朝の時間帯に特別な利用枠を新設する。
神社・お寺の御朱印: 地域の歴史・文化資源との結びつきを深める。
まちの番台展開: 新たな飲食店オーナーを確保・誘致するまでの仮の拠点として運営する。
市民割引の継続: 地域住民の日常的な利用を引き続き促進する。
これらの施策の展開を通じ、「今年は黒字に持っていきたい」との力強い意気込みが語られました。
(3)令和5年度 観光地経営に関する評価について
各委員より、令和5年度の観光地経営に関する評価が発表されました。
〜星野委員要旨〜
星野リゾート 界 長門の羽毛田支配人が、星野委員の代理として出席。「長門湯本での旅館単体ではなく、エリア全体としての価値提供がここ数年で大きく前進している」と評価しつつ、「インバウンドへの対応では、まだ取り組める余地が大きい。台湾を中心とした東アジア層への発信が始まっているのは良いが、欧米層へのアプローチ強化も重要になってくる」とコメントしました。
〜田中委員要旨〜
専門委員会の委員長として、令和5年度の年次点検と修繕計画の整理を概観しつつ、「未来振興基金を取り崩して回収する予定の事象はなしと整理できたのは、これまでの維持管理の積み重ねがあってこそ」と評価。一方で「メンテナンスだけでなく、軽微な補修・修繕を早めに行っておくことが10年単位の景観持続の鍵」と、引き続き継続的なメンテナンス体制の重要性を強調しました。
〜高橋委員要旨〜
「温泉地ランキング29位という結果は、5年間の取組が数字として可視化された節目として高く評価したい。シティプロモーションが結果に結びついている」と評価。情報発信の観点からは「ハブ機能としての長門市内における長門湯本温泉の位置付けを、わかりやすく発信していくことの重要性」を提言しました。
〜のかた委員要旨〜
「温泉地ランキング29位という結果に向けた取組の継続性が素晴らしい。岩田住職の活動など、長門湯本ならではの文化・人物の魅力をストーリーとして伝える発信の蓄積が、確実に効いてきている」と評価。長門湯本のメディアでの取り上げられ方の質的向上にも触れ、「ただの観光地紹介ではなく、人と文化のあるエピソードとして語られるようになってきている」と、ブランディングの成熟を実感している様子が伝わりました。
〜林委員要旨〜
エリアマネジメントの基本方針・ビジョンについて、「これまで明確に言語化されてこなかった部分について、改めてビジョンを立てるべき」との提言。組織が成熟してきたタイミングで、初心の「実現したい温泉街の姿」をあらためて言語化し、新メンバー含めて共有する重要性を強調しました。
また、新たな財源としての宿泊税についても言及。「福岡市の段階的設定(宿泊料金に応じた階層的料金)など、他都市の事例を参照した検討が始まっているのは良いこと。複数の選択肢を研究することが今こそ必要」と、研究フェーズの本格化を後押し。
〜梅川委員長 発言要旨〜
梅川委員長は「この会議も第9回ということで、随分蓄積を重ねてきた。こういった街づくりの評価を継続的にやっている市町村は決して多くない。長門市の取組に高い敬意を表したい」と切り出し、5年間の積み重ねを総括。
そのうえで、「温泉地ランキング29位は重要な節目だが、本当の意味でのトップ10入りに向けては、コンテンツの磨き上げと、それを伝える発信力の更なる強化が必要になってくる」「組織改編で観光スポーツ文化部が立ち上がり、新たな民間プレイヤー(白石千里さん・原田雄三取締役・西川さん他)も加わってきている。5年の蓄積の上に、新陳代謝も適切に進んでいるのは、持続可能なまちづくりのうえで非常に重要な状態」と語りました。
閉会
江原達也 長門市長より閉会の挨拶が行われました。
市長は「今日は皆さん本当にお疲れ様でした。大変貴重な意見をたくさんいただき、また、市議会の議論中で見えないところがあったものが今日はっきりした。一生懸命やっていただいているのもよく分かった」と感謝の言葉を述べました。
そのうえで「長門市としては、長門市全体の山陰地域のハブ機能を強化していきたい。その中心となるのが長門湯本温泉であり、さらなる磨き上げが必要だと、今日の様々な意見を伺って改めて分かった。町株(まち会社)、行政、観光コンベンションがしっかり一体となって、集客に取り組んでいきたい」と意気込みを示し、閉会の挨拶としました。
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以上、約3時間半にわたる議論を経て、第9回「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」は終了しました。温泉地ランキング29位という5年間の取り組みの結実、観光スポーツ文化部の創設、国の高付加価値化事業採択(11.4億円・5.9億円補助)、新たな財源としての宿泊税検討の開始——「次のステージ」が、はっきりと姿を現してきた回となりました。新メンバー(原田雄三取締役・白石千里スタッフ・ひだまり食堂の西川さん)の合流も含め、ハブ機能の中心としての長門湯本温泉のまちづくりは、5年の蓄積を基盤に、確かな歩みを続けていきます。

































































































