長門湯本温泉 公式観光サイト

長門湯本NEWS
2026.10.20

うつわの秋2026、5つの会場をめぐる

川沿いの窓から差す光が、深川萩の釉(うわぐすり)をやわらかく照らしています。淡い桃色に、飴色、土の色。「うつわの秋2026 〜茶菓一服〜」の期間中は、温泉街に点在する5つの会場で、うつわたちが待っています。
まちの番台の展示台で、白い線が交差する八角の皿を両手で持つ人

7回目のうつわの秋

深川萩の全5窯元・8人の作家が温泉街に出展する「うつわの秋」は、2020年にはじまり、今年で7回目を迎えました。今年のテーマは「茶菓一服」。お茶とお菓子でひと息つきながら、茶道に通じる季節感やもてなしの心を味わうひとときを表す言葉です。

会期に先立って、京都の和菓子作家・一方隅冴(いっぽうずみ さえ)氏が5つの窯を訪ね、それぞれのうつわに合わせた和菓子を仕立てたことも、今年の楽しみのひとつです。

深川萩とは、温泉街の隣にある三ノ瀬(そうのせ)の集落で焼かれてきた萩焼のこと。承応2年(1653)に萩の松本から陶工たちが移り住み、明暦3年(1657)に「三ノ瀬焼物所」が開かれてから約370年。江戸の末に12軒あった窯元のうち、いまは5軒がその火を守り続けています。

メイン会場 まちの番台

今年からメイン会場が恩湯から「まちの番台」へと移り、温泉街の玄関口で全作家の作品に出会えるようになりました。音信川に面したガラス張りの建物は、窓から差す光が白い壁と木の床の細長い空間を奥まで明るく満たしています。

窓辺の台のひとつには、坂田泥華窯・坂田澄治氏のうつわが並びます。脚の高い高杯(たかつき)が二つ、首の細い鶴首の花入や、豆皿と煎茶の器。煎茶の器は、白い釉が縦の削り目に沿って流れ、腰から下は土の色のまま残され、素朴な美しさを見せています。

白壁沿いの台では、十代坂倉善右衛門氏の皿が目を引きます。淡い桃色に若草、空色、山吹。縁に小さな切り込みを入れた角皿「ファニーディッシュ」や、豆のような形の「フリーディッシュ」が、やわらかく発色しています。工業デザインを学んだ経歴を持ち、山口の赤間硯(あかますずり)の石の粉を用いた独自の黒「月煌彩」でも知られる作り手です。

8人それぞれの手仕事を、ひと続きに見比べられる会場です。

おとずれ堂

まちの番台を出て、音信川沿いを歩きます。竹林の階段のそばに佇む古民家ギャラリーが「おとずれ堂」。のれんをくぐると、中は小庭の見える座敷が広がっています。

座敷の奥の床の間には、掛け軸の下に茶碗が三碗と、筒形の花入がひとつ。茶碗を出しているのは、十五代坂倉新兵衛として山口県指定無形文化財「萩焼」の保持者に認定され、2024年に名を改めた坂倉一渓氏、同じく保持者である新庄助右衛門窯十四代の新庄貞嗣氏、そして坂田澄治氏。この会場には、父の隣のろくろで土と向き合う新庄紹弘氏の花入と、田原崇雄氏の流白釉の花器も出ています。

窓辺に置かれた三つの白木の台では、器たちが逆光の中に浮かび上がります。中央で存在感を放つ馬の頭は、坂倉善右衛門氏の「KNIGHT」。この会場には、十六代坂倉新兵衛氏の水玉刷毛目水指と、十三代田原陶兵衛氏の灰被虹彩水指も展示されています。窯の中で灰に埋もれて焼き上がる「灰被」の景色は、田原家が三代前から取り組んできたものだそうです。茶陶の大作と作家性の強い造形が、ひとつの座敷に息づく空間です。

cafe&pottery音

深川萩の作家たちが共同で営む「cafe&pottery音」。入口のガラス戸には、店のロゴとともに作家たちの名前が並んでいます。

店内に揃うのは、日々の暮らしで手に取りやすいカップや取り皿、マグなど。古い木の床に据えた黒いテーブルや、白い布をかけた卓に、黒い鉢やマグ、花器が置かれています。坂倉善右衛門氏の「月煌彩」の茶碗も、ここで見ることができます。

会期中は、作家の茶碗で点てたお抹茶と、一方隅氏がこの秋のために仕立てた特製和菓子をいただけます。萩焼は使い込むほどに貫入(かんにゅう)と呼ばれる釉薬の細かなひびへお茶がしみ込み、少しずつ色合いが育っていきます。「萩の七化け」と呼ばれるその変化の入り口を、作り手たちの店で、茶碗を両手に包みながら味わうことができます。

大谷山荘

大谷山荘の会場は、2階のお土産処「山茶花」。入口に立つ、うつわの秋のポスターが目印です。

ここに集められているのは、ぐい呑、酒盃、徳利、片口といった酒器。温かな照明のもと、ガラスケースの黒い敷板の上に小さな器が並んでいます。十六代坂倉新兵衛氏の大道粉引の酒盃、田原崇雄氏の流白釉(りゅうはくゆう)の徳利、十三代田原陶兵衛氏の鉄釉の片口。白、乳白、飴色、黒と、同じ掌サイズの器でも作家ごとに肌合いが異なり、見比べるうちに一献傾ける情景が自然と浮かんできます。

十六代坂倉新兵衛氏は、萩焼の伝統の土である大道土に自ら採掘した土も混ぜ、装飾をそぎ落とした土そのものの質感で見せる茶碗を手がけています。深川萩の風土をやきものに表したいと語る作家です。一方、田原崇雄氏の流白釉は、萩の大道土に藁灰釉と松灰釉を重ね掛けし、褐色から淡い緑色へと色を移ろわせる釉です。三ノ瀬の窯跡で見つけた古い陶片が着想のもとになっているそうです。

玉仙閣

玉仙閣のロビーでは、生成りの布をかけたテーブルの上に、田原崇雄氏の「Tシリーズ」のマグや皿が食卓のような設えで並んでいます。Tシリーズは、田原陶兵衛工房の次代を担う田原崇雄氏と玉仙閣が手を携えて生み出した器。つやのある青みがかった灰色の釉が、ロビーのソファや窓辺の明るさによく馴染んでいます。

同じロビーには、田原陶兵衛窯と新庄貞嗣氏の作品も展示されています。新庄貞嗣氏の陶筥(とうばこ)は、ざらりとした土の箱に白い釉薬がたっぷりと流れ落ち、雪をかぶった山肌のような景色を見せます。

ロビーでは、Tシリーズのうつわで長門の特製プリンやコーヒーを味わえます。10月9日から18日までの期間には、一方隅氏の特製和菓子とコーヒーのセットも供されていました。白い角形の和菓子をのせた皿とコーヒーを注いだマグが、木の盆の上に並ぶ一揃えでした。

温泉街の関連企画

会期中、一方隅氏の和菓子は温泉街のお店に順番に登場します。深川萩のうつわを手に取り、使ってみる企画も、温泉街のあちこちで開かれています。

喫茶会「茶菓一服」 10月17日(土)・18日(日)に、恩湯広場でひらきました。深川萩の茶碗でお抹茶と和菓子をいただきながら、器を手がけた作家と一方隅氏の話を聞く会でした。

金継ぎ体験 10月14日(水)・15日(木)に、cafe&pottery音でひらきました。初めての方でも参加できる、2〜3時間ほどの修復体験でした。

茶箱セット あけぼのカフェ。深川萩のお茶碗とどらやきを詰めた茶箱で、温泉街のお気に入りの場所で野点を楽しむ企画。10月23日からは、一方隅氏の特製和菓子付きの野点セットもはじまります。

特製カクテル THE BAR NAGATO。十三代田原陶兵衛氏のうつわで、長門市初のクラフトジン「青舞(オーブ)」を使った限定ドリンク。10月16日から25日までは、特製和菓子とのペアリングも楽しめます。

コラボ展示 365+1 BEER。深川萩と長門湯本のクラフトビールが出会い、作陶の過程を垣間見られる展示。10月16日から25日までは、特製和菓子とビールのペアリングも楽しめます。

深川窯訪問ツアー SOIL Nagatoyumoto。山口県の指定文化財「萩焼深川古窯跡群」の本窯跡と、田原陶兵衛工房のギャラリーを訪ねるツアー。10月12日までは、ツアーで特製和菓子も出ていました。

うつわの菓子箱 ainoneが地元の素材で焼いた、この時期だけの公式クッキー。うつわの形をした4種のクッキーの詰め合わせで、まちの番台、恩湯喫茶室、cafe&pottery音などで販売しています。

同じ深川萩でも、置かれる場所によって顔が変わります。古民家の座敷では一碗ずつ、カフェの卓では手に取る近さで、宿のロビーでは食卓のかたちで。会場ごとに営業時間と定休日が違うので、出かける前にご確認ください。

会期
2026年10月2日(金)〜11月3日(火)
メイン会場
まちの番台(11:00〜17:00/会期中無休)
サテライト会場
おとずれ堂(10:00〜17:00/休 火・水・木)
cafe&pottery音(10:00〜16:00/休 水・木)
大谷山荘(平日 8:00〜11:30、13:30〜19:00/土・日・祝 8:00〜19:00)
玉仙閣(11:00〜17:00)
※大谷山荘・玉仙閣の休館日は各施設の公式HPをご確認ください
出展
坂倉新兵衛窯/坂倉善右衛門窯/坂田泥華窯/新庄助右衛門窯/田原陶兵衛窯
入場
無料
※一部の関連企画等は有料となります。
主催
萩焼深川窯振興協議会/長門湯本温泉まち株式会社

※恩湯では10月9日(金)〜11月10日(火)に「湯道展」を開催しています(うつわの秋とは会期が異なります)。