長門湯本温泉 公式観光サイト
長門湯本温泉の元湯である恩湯には、室町時代に遡る「神授の湯」伝説が今も息づいています
長門湯本温泉「恩湯」は、約600年前、大寧寺の定庵禅師が住吉大明神からのお告げによって発見した“神授の湯”と伝えられる山口県で最も古い歴史を持つ温泉。当時、大寧寺の寺領であったこの場所に沸き上がったとされる温泉は、現在もなお中心部の泉源を大寧寺が所有し、伝説を裏付けるかのように高台には住吉神社が鎮座し、温泉街を見守っています。
恩湯と深い結びつきのある大寧寺は、かつては全国に六百数十ケ寺に及ぶ末寺を持つ僧録(そうろく)寺として栄え、「西の高野」と称えらるその壮麗な美観に、毛利家の香華院、萩藩毛利家の上級家臣もこぞって境内に墓碑を建立したと言われています。江戸時代前期のものとされる盤石橋や、桜や紅葉などが境内を彩る四季折々の美しさは、今も多くの方を魅了しています。
およぞ600年前、室町の時代。大寧寺3代目住職の定庵殊禅(じょうあんしゅぜん)の盛名を慕い、住吉大明神は時には老翁、時には婦人の姿に化して仏道修行に励んでいました。
ある晴れた月の夜、禅師が境内を散策していると、石の上で座禅を組む老翁に出会います。禅師が名を尋ねると、老翁は「松風の声のうちなる隠れ家にむかしも今も住吉の神」と一首の和歌を通じて、その真の姿が住吉大明神であることを明かします。
禅師は直ちに住吉大明神を部屋に招き、仏道の奥義を印可する菩薩大戒と錦の袈裟を老翁に授けます。老翁はその恩に報いるために、現在の恩湯の位置に温泉を沸かしたことを伝え、大きな竜となって雷雲とともに天空に去って行きました。
今も大寧寺の境内には、住吉大明神が座禅を組んだとされる「安禅石」が残るほか、奥の院である開山堂には、千早直垂の上に袈裟を掛け、冠を戴いた住吉大明神の木彫像が、「當山傳法第四位當国一宮住吉大明神」と記された尊牌を前にして祀られています。
2020年にリニューアルした恩湯では、長門湯本温泉の原点とも言えるこの物語を大切に、代々受け継がれてきた住吉大明神の石像が温泉が自噴する岩盤の上に祀られています。入浴者は数百年前にこの地で生まれた伝説に思いを馳せながら、深さ1メートルの浴槽で湯浴みを楽しみます。