長門湯本NEWS:ながトークvol.37レポート〜マナビノタネ 森田秀之さんと語る「自治と湯守」〜
秋風が心地よい季節になりました。2026年10月5日の「ながトーク vol.37」は、予定していた恩湯の喫茶室から、屋外の恩湯広場へ会場を移しての開催。20名を超える方が集まりました。
自分らしいスタイルで街を面白くする人々を迎え、その思いや活動に迫る「ながトーク」。今回のゲストは、株式会社マナビノタネ代表の森田秀之さんです。せんだいメディアテークや武蔵野プレイス、都城市立図書館など、全国で図書館をはじめとする学びの場づくりに携わってきた森田さん。いまは長野県の「コードマーク御代田」を拠点に、米と薪をつくっているそうです。聞き手は長門湯守共同代表の大谷和弘さんと、長門湯本温泉まち株式会社エリアマネージャーの木村隼斗さん。テーマは「自治と湯守」です。
トークに先立ち、POTLUCKのプロデューサー、山本雄生さんから、恩湯の「POTLUCK AWARD 2026」準グランプリ受賞の報告がありました。森田さんを紹介してくれたのも、山本さんだそうです。
「湯上がりなもんですから」
そんな前置きから始まった、森田さんのお話。図書館や米づくりの話をたどるうちに、話題は「記憶」へとつながっていきました。
「わかった」の、その先へ
森田さんが開館に関わった東京都武蔵野市の武蔵野プレイスは、図書館に青少年の居場所や市民活動の支援を組み合わせた施設です。基本構想にあったのは「知的創造拠点」という言葉。森田さんはこれを、アクションの連鎖が起こる機会と場を提供し、それを支援する、という考え方に書き換えたといいます。
人は「わかった」で満足してしまう。けれど、大事なのはその先にある。知ったことが、何かを始めるきっかけになるように。武蔵野プレイスではいま、利用者の部活動がいくつも生まれているそうです。
街なかのショッピングモールを図書館に生まれ変わらせた、宮崎県の都城市立図書館。森田さんは、ここの運営にも携わっています。図書館の真ん中で落語が開かれたり、祭りができなかったコロナ禍の年にはお神輿がつくられたりしたそうです。図書館と聞いて思い浮かべる風景が、少し変わるようなお話でした。
同じ田んぼで、毎年続ける
図書館の話に続いて語られたのは、米と薪のことでした。
19年前に信州へ移り住んだ森田さんにとって、米づくりや薪づくりは「学ぶことを学ぶ場」。手を動かすうちに技や知恵が身につき、地域や自然の役に立っている実感も得られるといいます。大切にしているのは、イベントにせず、毎年同じ田んぼで同じことを続けることです。
毎年続ける営みがある一方、イベントは3年たったらやめるか、別の形にする。森田さんはそう決めているそうです。山形県の湯田川温泉で手がけた「朝ミュージアム」も、旅館がそれぞれ担えるようになったところで手を離したそうです。
目指しているのは、それが日常になること。米や薪をつくる話と、イベントから手を離す話が、ここでつながります。
記憶が、まちをつくる
後半、話の中心になったのは「記憶」でした。
図書館を評価するとき、森田さんたちが来館者数や貸出冊数より大事にしているのは、その場で生まれたエピソードだといいます。同じ思い出を語り合える仲間とは、別のことに取り組むときにも力を合わせられる。自治は自分ごとから始まり、やがて「自分たちごと」になっていく。森田さんはそう話します。
終盤は、会場との質疑応答の時間になりました。地元で自分たちの場所のこれからを考えている人、東京から足を運んでくれた人。それぞれの関心から問いが投げかけられ、森田さんは一つひとつに言葉を返していきます。時間が押してきても、「あと一人ぐらい」の声にまた手が挙がる。「ゆるゆるな回答で」と森田さんは言いましたが、客席にはうなずきながら聞く人の姿もありました。そんなやりとりが、夜の広場でしばらく続きました。
森田さんは、終わったあとにもう一度語り直す時間こそが大事だとも話していました。
ながトークも、一夜かぎりの集まりです。けれど、そこで聞いた話は、あとから誰かと話すきっかけにもなります。図書館のこと、米づくりのこと、記憶のこと。この夜の話が、次に顔を合わせたときの会話へと続いていったらうれしく思います。
森田秀之さん、そしてご参加くださった皆さん、ありがとうございました。