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長門湯本REPORT:第11回長門湯本温泉みらい振興評価委員会が開催されました

第11回目となる「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」が開催されました。

この回の要点 | 第11回(2025年6月3日)

第1回からちょうど5年の節目。5年間の成果を総括した回。

  • RevPAR 3割向上(2019年比)/温泉街への新規投資 17件
  • 基金残高 約1,226万円/進捗率 27.2%。SOIL長門湯本の誘致が実現
  • 委員評価はまち会社事業に高評価(多くが5点満点、梅川委員長4.5点)

結論:5年の積み重ねを土台に、次の10年へ向けた中長期マネジメントが論点に。

2025年6月3日(火)、長門市役所4階 会議室にて、第11回目となる「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」が開催されました。第1回の開催が2020年6月30日でしたので、ちょうど5年の節目となる委員会となります。

これは、外部の専門家等が長門湯本温泉の観光まちづくりを検証し、その知見をまちの未来に生かすために、長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例に基づき、年に2回開催されるものです。

■ <長門湯本温泉みらい振興評価委員会>

長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例(令和元年12月26日条例第16号)に基づき設置され、第三者評価とするため外部の有識者で構成。長門湯本温泉の持続的な観光まちづくりを進めるため、本基金の使途の透明性の確保および運用の適正化を狙いとする。

長門市およびエリアマネジメント法人(長門湯本温泉まち株式会社)が本基金を財源として実施する事業を評価するとともに、持続的な観光まちづくりにつながる事業に要する本基金の処分について、市長に意見を述べる。

※この会議は原則公開となっており、会議の模様はyoutubeにて全編が公開されています。

評価委員会には以下のメンバーが参加しました。

氏名所属・分野出欠
梅川 智也國學院大学/学識経験者オンライン
高橋 俊宏株式会社ディスカバージャパン/メディア出席
田中 智之早稲田大学 理工学術院/建築・空間デザイン出席
のかた あきこ旅ジャーナリスト出席
林 千晶株式会社Q0/コミュニティデザイン出席
星野 佳路星野リゾート/観光業出席
伊藤 就一長門湯本温泉まち株式会社 代表取締役出席
木村 隼斗長門湯本温泉まち株式会社 エリアマネージャー出席
大谷 和弘長門湯守株式会社 共同代表出席
岡 雄大株式会社Staple 代表取締役出席
江原 達也長門市長オンライン
第11回長門湯本温泉みらい振興評価委員会の会場全景。長門市役所の会議室
第11回目となる今回は、長門市役所の会議室にて、行政、民間事業者、外部評価委員の皆さんが集まって、重要な振り返りと未来に向けての議論が行われました。

審議・検討事項

(1)令和6年度 長門市の取組結果について
(2)専門委員会からの報告について
(3)長門湯本温泉の取組状況について
(4)令和6年度 長門湯本温泉まち株式会社の取組結果及び観光地経営に関するモニタリング結果の報告について
(5)令和6年度 観光地経営に関する評価について

開会

まず冒頭に、江原達也 長門市市長より開会の挨拶が行われました。

〜市長 挨拶要旨〜

ゴールデンウィークの長門湯本温泉の賑わいに加え、令和6年の市全体の観光客数が211万人、宿泊者数が前年比約120%増となるなど、観光需要はコロナ禍前の水準へと順調に回復しています。今春の新店舗オープンやプレミアム宿泊券の即完売など地域に明るい話題が続く中、市としては大阪・関西万博への出展や来年の山口デスティネーションキャンペーンを見据え、今後3年間を重点期間としてさらなる観光客誘致に注力していく方針です。委員の皆様には、長門湯本に留まらず長門市全体を見据えた活発なご意見をいただきたいと考えています。

(1)令和6年度 長門市の取組結果について

梅川智也評価委員長の進行のもと、長門市観光政策課より令和6年度の取組状況について報告がありました。

〜報告要旨〜

  • 長門湯本温泉みらい振興基金の現状: 2024年度末の基金残高は約1,226万円で、2028年度の積立目標(4,500万円)に対し進捗率は27.2%に留まる。2029年に大規模な照明器具交換(4,500万円規模)が控えているため、観光客増加や財源検討、駐車場収支の見直しなどにより着実な積立を目指す。

  • 合同年次点検と修繕: 令和6年9月に市長同行のもと合同点検を実施。一の瀬橋の移設、桜の幹の腐朽対応、メイン階段の竹垣撤去などの修繕を完了した。今年度は基金を取り崩すような大規模修繕の予定はない。

  • 照明灯具の改修: 令和3年度の落雷被害から続く一連の改修工事は、令和6年6月のサージ対策(避雷設備)設置をもって完了。今後は予算内で順次不具合の修繕を行う。

  • 観光プロモーションの体制刷新: これまでの4組織連携によるPR活動から、今年度はさらなる発展を目指し「長門観光コンベンション協会」を中心とした体制へ移行。各エリアと協議しながら効果的な展開を進める。

  • 長門市全体の観光振興策:

    • アクセス向上: 福岡からの高速バス「おとずれ号」の運行開始、新山口駅や山口宇部空港からの直通便継続、さらに「ながと周遊観光タクシー」の運行を開始。

    • 施策・インバウンド: プレミアム宿泊券の発行、観光庁補助などを活用したインバウンド受け入れ整備や情報発信を実施。令和7年度には新たなインバウンド向け情報発信事業も予定。

(2)専門委員会からの報告について

各委員の発言要旨は次のとおり

〜田中委員要旨〜

2024年は収入増加策として、入湯税の見直し、ふるさと納税の活用検討などを行なってきた。2025年度はより安定的な基金積立に向けて「宿泊税の新設」や「入湯税の増収・上乗せ」など4つの収入増加策を重点的に継続審議し、2026年度以降の着実な積立につなげたい。

〜星野委員要旨〜

税の効果を発揮するには、収入を活用するDMO(観光地域づくり法人)がしっかり機能していることが前提だが、日本ではそうでない地域が多いのが現実。宿泊税は一見観光客が払うように見えても、価格競争の中で結局は地元の事業者が負担することになるため、導入には十分な検討と体制整備が必要。

(3)長門湯本温泉の取組状況について

長門湯本温泉まち株式会社 伊藤代表取締役より取締役体制再編成について報告があったのち、株式会社Staple 岡代表取締役より「SOIL長門湯本」の紹介、長門湯守株式会社 大谷共同代表より恩湯の取組について説明がありました。

〜長門湯本温泉まち株式会社 伊藤代表 発言要旨要旨〜

会社設立当初からのミッションは『実現したい温泉街の姿への共感を生み出し、共感する地域内外の主体と共に価値を高める取り組みを常に共に作り、これを事業として継続し地域への再投資を実現することを通じて、温泉が豊かな日常の場となることを目指す』こと。共感を軸に、地域に根ざした取り組みを積み重ね、最終的には『平準化』の実現を目指している。2026年の『うたあかり』の実現に向けて、今後も各方面への報告と協力をお願いしていきたい。

〜株式会社Staple 岡代表 発言要旨〜

株式会社Stapleは、『旅の目的地化』と『地域の日常の豊かさの拡張』を両立させるべく、4つの事業を垂直統合し、地域と持続的な関係を築いている。『SOIL長門湯本』では地域資源を活かす設計を行い、恩湯との連携や自然体験を通じて地域との接点を強化した。街に開かれた設計も特徴である。開業前には地域協力のもとメディア露出を実施し、特に旧館オーナーの思いや引き継ぎの経緯に焦点を当てた記事は、関係者にとって喜ばしい内容となった。

〜長門湯守株式会社 大谷共同代表 発言要旨〜

長門湯守株式会社では、インバウンド誘致と生活文化の醸成に取り組んでおり、『うたあかり』や桜を活用したプロモーションで閑散期の集客を改善している。今後は台湾・韓国向け情報発信も強化していく予定。市民割や地域の小学生に向けた湯道教室、150年ぶりの地域行事復活など、地域との関係を深める取り組みを進めるとともに、外部パートナーとの文化連携も継続している。事業は5年目で黒字化を達成した。

(4)令和6年度 長門湯本温泉まち株式会社の取組結果及び観光地経営に関するモニタリング結果の報告について

続いて長門湯本温泉まち株式会社 木村エリアマネージャーより、観光地経営モニタリングの視点に基づき、この5年間の活動の振り返りが報告されました。

〜報告要旨〜

  • RevPAR(販売可能客室数あたり客室売上): 2019年以降の宿泊者数推移やコロナ前後の需給変化、温泉街全体のRevPAR推移、インバウンドPR戦略など、5年間の歩みを報告。

  • 新規投資: プロジェクト前後における新規事業者の変容、事業創出の仕組み、インフラ・民間事業を掛け合わせたプロジェクトの推移を整理。

  • 従業員満足度と生活者関与度: 働き手との共創関係や満足度の推移を報告。「オソトメンバーズ」や「湯道文化振興会」等との連携による地域住民・生活者の関与状況と、今後の連携強化目標を提示。

  • メディア露出と各種評価: 2020〜2024年のオウンドメディア・TV等の露出実績、人気温泉地ランキング、エリアマネジメント事業の健全性を振り返り、今後の観光地経営モニタリングの重点方向性を明示。

  • 総括: ハード整備完了から5年が経過し、各指標には温泉街の変化と関係者のこれまでの積み重ねが反映されている。

(5)令和6年度 観光地経営に関する評価について

最後に各委員より、令和6年度の観光地経営についての評価が発表されました。

〜高橋委員 発言要旨〜

まち会社の事業については5点満点。SOILの誘致実現に向けた調整力や、長門にはなかった新たな宿泊施設の創出は見事である。高付加価値層を狙う方針が一貫していたからこそ、RevPAR(販売可能客室数あたり客室売上)3割向上という確かな成果に結びついた。この5年間、計画的かつ着実に実行されており、全国のまちづくり事例の中でも極めて優れた取り組みだ。

行政(長門市)の取り組みについても、役割を十分に果たしている。特に高速バス「おとずれ号」が維持され、今年度から2往復へと増便された点は高く評価したいポイントだ。今後の観光プロモーションにおいては、市・まち会社・観光コンベンションの三者が戦略的に連携し、的確にターゲットを見据えた展開をしていくことを期待する。

〜田中委員 発言要旨〜

まち会社の事業は5点満点。丁寧なモニタリングとレビューを積み重ねたことで取り組みが体系化され、面としての成果が見え始めている。今後は、非日常と生活感を両立させたエリアイメージの形成、定番コンテンツの確立、従業員満足への配慮、そして景観を次の10年へ向けて更新していくことが鍵になると考える。長門市の取り組みに対しては、4つの提案がある。1点目は基金の積み上げに向けた継続的な検討、2点目は景観インフラの維持修繕に対する計画的なファシリティ・マネジメント(施設管理)の導入、3点目は市・まち会社・観光コンベンションの3組織による体系的なプロモーション連携の強化である。最後に4点目として、計画と目標に対する進捗が明確に分かるような報告の工夫を期待する。

〜野方委員 発言要旨〜

まち会社の事業は5点満点。モニタリング6項目の成果指標が着実に改善しており、特にRevPAR、新規投資、従業員満足度への取り組みが顕著である。SOILをはじめとする17件の新規投資や、入湯税相当の新制度なども大きな成果だ。「しっちょき隊」の活動は、地域理解とサービス向上を両立させる好事例であり、横の広がりにも期待が持てる。オソト活用協議会も、地域の人々が主体的に関わる場づくりが進み、活動の継続性と広がりが生まれている点を高く評価したい。

市の取り組みについては、基金に関する数値の継続的な開示が、公・民・地域の三者で課題を共有するうえで非常に有益だと評価する。インフラ修繕の合同点検、観光プロモーション、アクセス改善も役割分担のもとで進められており、その姿勢は心強い。移住支援や子育て環境にも特色があるため、今後の継続的な関わりを期待する。

〜林委員 発言要旨〜

林委員は「まち会社の事業には5点満点をつけた。特に新規事業開発において『なくてはならない場所』が次々と生まれている点を高く評価している。これは地域の生活に溶け込み、日常に欠かせない存在となった証であり、イノベーションの本質を体現するものである」と評価しました。

一方で「次の5年に向けては、エリアマネジメント事業の財政的な健全性が課題と考える。ふるさと納税との戦略的連携を強化し、まち会社主導で収益基盤の拡充を図ることを提案したい」と続けました。

市の取り組みについては「まずこの評価委員会という場を継続して設けてくださっていること自体に深く感謝している。照明、ナビゲーション、トイレなどの細かなインフラを継続的に点検・改善していく姿勢は素晴らしく、今後も維持してほしい。また、国内外の交通のハブである福岡とのアクセスについても、定期バス便の維持・発展が図られており高く評価したい。今後はさらなる交通利便性の向上に期待している」と述べました。

〜星野委員 発言要旨〜

評価4点。特に新規事業開発において、地域に「なくてはならない場所」が次々と生まれている点を高く評価している。日常に欠かせない存在として生活に溶け込んでおり、これこそがイノベーションの本質を体現するものだと確信している。一方で、次の5年に向けてはエリアマネジメント事業の財政的な健全性が課題だ。ふるさと納税との戦略的連携を強化し、まち会社主導で収益基盤の拡充を図ることを提案したい。

市の取り組みについては、まずこの評価委員会という場を継続して設けていること自体に深く感謝する。照明やナビゲーション、トイレなどの細かなインフラを継続的に点検・改善していく姿勢は素晴らしく、今後も維持してほしい。また、国内外の交通のハブである福岡との定期バス便が維持・発展されている点も高く評価している。今後はさらなる交通利便性の向上に期待する。

〜梅川委員長 発言要旨〜

まち会社の評価は4.5点。5年間の成果は高く評価する一方で、中長期のマネジメント計画についての議論が十分に行われなかった点で0.5点減点とした。ただし、資料には既に中期計画が策定されており、今後しっかり議論されることを期待している。また、年2回開催される評価会議については、時期ごとの役割や目的を明確に整理することで、より有意義な場になる。5年を経た今こそ、会議の機能を見直す好機だ。

今後の方向性として、観光庁のDMO方針が大きく変わり、マーケティングよりも「マネジメント」が重視される時代になる。まち会社はすでに地域づくりや受入環境整備、住民理解の促進など、次世代DMOとしての本質的役割を果たしており、全国のモデルとなりうる存在だ。新基準では正規職員体制や組織ガバナンスが求められるため、まち会社の役割と体制を再構築し、戦略的DMOとしての登録に挑戦してほしい。中期事業計画もその基盤となりうる。

閉会

以上、約2時間にわたる活発な議論を経て、第11回「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」は終了しました。今回は5年間の振り返りとともに、次の10年を見据えた中長期的な展望についても、多くの示唆に富んだ意見が寄せられたことが印象的でした。財源、組織、DX、インバウンド、そしてマネジメントの在り方——いずれも一朝一夕に答えの出る論点ではありませんが、5年の積み重ねがあってこそ、こうした「次の段階」の議論ができる場が整ってきたのだと感じます。ポジティブな変化を重ねながらも課題を共有し、長門湯本温泉の観光まちづくりは、引き続き着実に前へと進んでいきます。