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長門湯本REPORT:第6回長門湯本温泉みらい振興評価委員会が開催されました

第6回目となる「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」が開催されました。

この回の要点 | 第6回(2022年11月11日)

長門湯本温泉みらい振興基金の活用方針「4つの柱」を議論した回。

  • 基金活用の大原則「公民連携による魅力向上」を明文化
  • 恩湯の温泉表記改善案「アルカリ性単純温泉(ほんのり硫黄湯)」など魅力発信策

結論:基金を「予算」から「公民共同の投資」へ。使途の考え方を共有。

2022年11月11日(金)、第6回目となる「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」が開催されました。今回は委員のうち4名が現地、2名がオンライン、1名が欠席という、コロナ禍からの段階的な対面復活を映すハイブリッド形式での開催。梅川委員長も「久しぶりにリアルで参加」と、対面の場が戻ってきたことへの実感を共有しました。

これは、外部の専門家等が長門湯本温泉の観光まちづくりを検証し、その知見をまちの未来に生かすために、長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例に基づき、年に2回開催されるものです。

■ <長門湯本温泉みらい振興評価委員会>

長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例(令和元年12月26日条例第16号)に基づき設置され、第三者評価とするため外部の有識者で構成。長門湯本温泉の持続的な観光まちづくりを進めるため、本基金の使途の透明性の確保および運用の適正化を狙いとする。

長門市およびエリアマネジメント法人(長門湯本温泉まち株式会社)が本基金を財源として実施する事業を評価するとともに、持続的な観光まちづくりにつながる事業に要する本基金の処分について、市長に意見を述べる。

※この会議は原則公開となっており、会議の模様はyoutubeにて全編が公開されています。

評価委員会には以下のメンバーが参加しました。

氏名所属・分野出欠
梅川 智也(委員長)國學院大学/学識経験者出席
高橋 俊宏株式会社ディスカバージャパン/メディア出席
田中 智之熊本大学大学院/建築・空間デザイン出席
中尾 大介株式会社WAKU WAKUやまのうち/まちづくり・金融オンライン
のかた あきこ旅ジャーナリストオンライン
林 千晶株式会社Q0/コミュニティデザイン欠席
星野 佳路星野リゾート/観光業出席
伊藤 就一長門湯本温泉まち株式会社 代表取締役出席
木村 隼斗長門湯本温泉まち株式会社 エリアマネージャー出席
大谷 和弘長門湯守株式会社 共同代表出席
江原 達也長門市長出席

審議・検討事項

(1)令和3年度 観光地経営に関する評価について

(2)長門湯本温泉みらい振興基金の活用方針(4つの柱)について
(3)令和4年度の取組状況・修繕計画・恩湯のブランディングについて

開会

まず冒頭に、江原達也 長門市長より開会の挨拶が行われました。

〜市長 挨拶要旨〜

市長は「未来振興評価委員会も今回で第6回目を迎える。コロナ禍が徐々に明けて、観光客が戻ってきている。長門湯本温泉でも、11月の連休にはたくさんの方々にお越しいただき、そぞろ歩きを楽しんでいただいている風景を見ると、リニューアル整備の成果が着実に表れていると感じる」と振り返りました。

そのうえで「今年度上半期の宿泊客数が前年比1.3倍と回復基調にある一方、コロナ前の水準にはまだ及ばない。引き続き官民連携で持続的な観光地経営を進めていきたい」と意気込みを示し、開会の挨拶としました。

(1)令和3年度 観光地経営に関する評価について

第5回評価委員会で取りまとめられた評価方法(まち会社は5段階評価+定性コメント/行政は定性コメント)に基づき、令和3年度の取組について各委員からの評価コメントが共有されました。

〜報告要旨〜

当時はコロナ禍の最中であり、その困難な状況下での取り組みに対する評価が議論の中心となった。具体的には、忍耐の1年でありながらも、できることを着実に積み重ね、Withコロナ時代の足場となるような前向きな取り組みが見られたと言及されました。

特に、オープンスペースや官民が接続する公共空間の活用については高い評価が集まりました。また、西日本鉄道と連携した高速バス「おとずれ号」による福岡直行便の実現は、ターゲットである福岡エリアを的確に狙っていくという戦略を、インフラ企業と協働して形にした非常に優れた成果であると評価されました。

全体として、前回の議論を引き継ぐかたちで、5年スパンで取り組む観光地経営の方向性が改めて再確認される場となりました。

(2)長門湯本温泉みらい振興基金の活用方針(4つの柱)について

今回の会議で最も重要な議題となったのが、長門湯本温泉みらい振興基金の活用方針の策定でした。第4回(2021年12月)での「専門委員会設置」「基金取り崩しルールの明確化」を経て、専門委員会で検討を重ねてきた基金活用の方針が、4つの柱として取りまとめられました。

〜4つの柱〜

第1 | 公民連携により、温泉街の魅力を向上させる取り組みに活用する | 基金活用の大原則。公民が連携し、長門湯本温泉街の魅力を高める取り組みに基金を活用する。魅力向上の観点から、設計や施工に関しても、長門湯本温泉の持続的な観光まちづくりに関する想定に基づき、事前に協議を進めることが望ましい

第2 | 景観インフラの維持管理に活用する | 街並み・景観・公共空間の持続的な維持管理

第3 | 観光地経営のための取組に活用する | エリアマネジメント機能の運営費・事業費

第4 | 新規事業の創出に活用する | 新たな民間投資の呼び込み、新規プロジェクトの初期投資支援

特に第1の柱「公民連携で温泉街の魅力を向上させる」が、基金活用の大原則として位置づけられたことが画期的でした。「単に行政が行う維持管理費」ではなく、「公民連携による魅力向上」を優先投資の対象とすることが、基金条例の運用思想として明文化されたかたちです。

「魅力を高めるエリアマネジメント」への優先投資

専門委員会の議論を通じて、基金活用の優先順位として、「魅力を高めるエリアマネジメント」が最上位に置かれました。これは、基金が単なる景観維持費の財源ではなく、温泉街そのものの価値を能動的に上げていく投資原資として位置づけられたことを意味します。

委員からは「公民連携による魅力向上を大原則とする方針は、長門湯本温泉らしい運営思想を体現している」「他の温泉地でも参考になる先進事例だ」との評価が寄せられました。

(3)令和4年度の取組状況・修繕計画・恩湯のブランディングについて

〜報告要旨〜

  • 令和4年度の入湯税見込み :令和4年度の入湯税の見込みについて、上半期実績で前年同期比1.3倍と回復基調にあることが報告されました。下半期も同程度の傾向を見込み、年度全体として基金積立財源の改善が見られるとの見立てが共有されました。

  • 落雷による景観照明改修の進捗令和3年7月に発生した落雷による照明不具合について、令和4年度に東部の調査業務を実施し、その後入札に付す段階に進展。具体的な改修工事は令和5年度に発注予定。委員会では「想定外の事象でない限り、修繕予備費50万円は使う見込みはない」との見通しも共有されました。

  • 恩湯のブランディング:温泉表記の改善提案第6回での印象的な議論として、大谷長門湯守共同代表から恩湯(おんとう)の温泉表記の改善提案がありました。「恩湯の現在の温泉表記は『アルカリ性単純温泉』。これは事実として正しいが、お客様への訴求力という観点ではもう少し工夫の余地がある」「『アルカリ性単純温泉(ほんのり硫黄湯)』と書くと、お湯の特徴がより伝わる。長門湯本のお湯は、強い硫黄ではないが、ほんのり硫黄を感じる絶妙な湯——この絶妙さこそが、長門湯本のお湯の魅力」。「ほんのり硫黄湯」という新しい表現の提案は、恩湯のブランディング、ひいては長門湯本温泉全体の温泉ブランディングを次のステージに進める提案として、委員会で高く評価されました。「温泉の科学的成分の表記だけでなく、お客様が体感できる質感を言葉にする」というブランディングの本質に踏み込んだ議論でした。「恩湯から始めて、これを長門湯本温泉全体のお湯の表現として広げていく」という方針が共有され、湯守側・まち会社側でも検討を進めることが確認されました。

■ 木村エリアマネージャー 報告:令和4年度の取り組み状況と来年度事業計画

長門湯本温泉まち株式会社 木村隼斗エリアマネージャーより、令和4年度の取り組み状況と来年度の事業計画案について報告がありました。

〜報告要旨〜

1. 宿泊客数の回復状況と地域別の動向

回復の概況:宿泊者数はコロナ前(2019年)と比較して、4〜6月期が81%、7〜9月期が83%まで回復してきています。
地域別の傾向: 山口県内、広島、福岡からの人流はコロナ前の水準に戻りつつありますが、大阪はまだ回復の途上にあり、首都圏からの客足は半分程度に留まっているという現状が共有されました。

2. 令和4年度の主な取り組み実績

季節ごとのイベント展開: 春の「川床開き」や「橋上アフタヌーンティー」、初夏の「リバーフェスタ(橋上レストランは満席)」を開催しました。秋には温泉街リニューアル後初となる伝統芸能「南条踊り」の開催や、萩焼作家との連携が3回目を迎え安定期に入った「うつわの秋」、さらに企画列車「ゆずきち号」のJR美祢線運行などを多角的に展開しました。
公共空間の活用と美観維持: 温泉街全体で統一感のあるパラソルの設置を進めたほか、食品衛生許可を取得済みの共用屋台「オソトキッチン」の整備を完了しました。なお、住民組織である「オソト活用協議会」は設立5周年を迎えました。
モビリティ(二次交通)の進化:レンタサイクルの受付を「恩湯」での当日受付対応へと変更し利便性を向上させました。さらに、新たな試みとして山口市の事業者と連携した「おとずレンタカー」をスモールスタートさせる方針が共有されました。

3. 来年度に向けた中長期戦略とインバウンド・閑散期対策

今後3年間ブレずに推進する柱として、以下の戦略が提示されました。

ブランディング:立ち寄り湯「恩湯」をシンボルとした地域独自の価値(主格性)を高め、「オソト天国」というフレーズのさらなる浸透を図ります。
地域別プロモーションの最適化: 山口県内へは「小さくとも小まめな良いニュース」を、福岡・大阪へは「交通事業者との緊密な連携」を、首都圏へは「ブランディングメディア(雑誌等)の活用」を、それぞれ展開します。
インバウンド対策:2020年度に導入済みの地域予約決済システムを有効活用し、海外のOTA(オンライン旅行会社)経由での宿泊・体験予約の導線確立を進めます。
閑散期対策の強化:冬季のライトアップイベント「音信川うたあかり」を、2月の閑散期における確実な集客の核へと繋げていく方針が示されました。

 4. 来年度事業計画の予算案

電気料金の高騰などの影響を勘案し、日常インフラ管理における「照明代」の予算を従来の150万円から200万円へと見直しました。他の項目で費用を調整することにより、事業全体としては前年比40万円増額となる「合計2,830万円規模」の予算案が提案されました。

■ 委員からの議論

〜田中委員 発言要旨〜

田中委員は、専門委員会での基金活用方針策定の経緯と、その意義について説明。「専門委員会では、第4回で議論された『基金取り崩しルールの明確化』を引き継ぎ、4つの柱を体系化することで、基金が観光まちづくりにおいてどう機能すべきかの全体像を明文化した」「特に、第1の柱『公民連携での魅力向上』を大原則として位置づけたことは、長門湯本温泉のこれからの10年を方向づける重要な決定」と総括。

景観インフラの維持管理についても、「ファシリティ・マネジメントの視点で、日々のメンテナンス・軽微な補修・大規模修繕を計画的に組み立てていく必要がある。基金の取り崩しは『大きな波』を避け、平準化を意識して運用すべき」と提言しました。

〜星野委員 発言要旨〜

星野委員は、4つの柱の方針について「公民連携を大原則とした点は、観光地経営の質を担保するうえで非常に重要。基金が『行政の予算余り』ではなく、『公民共同の投資ファンド』として機能する設計になっている」と高く評価しました。

恩湯のブランディングについては、上述の「ほんのり硫黄湯」提案に加えて、「長門湯本のお湯の魅力を言葉で伝える取り組みを、湯守だけでなくまち会社・行政・旅館組合と連携して進めていくべき。お湯の表現が温泉街全体のブランディングに直結する」と、温泉表現の戦略性を強調しました。

〜のかた委員 発言要旨〜

のかた委員は、旅ジャーナリストの立場から「恩湯の『ほんのり硫黄湯』表現は素晴らしい。これまで温泉地を取材する中で、お湯の質感を消費者目線で言語化している温泉地は少ない。長門湯本がこの表現を打ち出すことで、メディアでも取り上げやすくなる」と評価。

また、コロナ禍からの観光客回復について「現地で見ていても、観光客の質が上がっている印象。リニューアル整備が完了してから訪れる方々は、長門湯本温泉のコンセプトに共感して来ている方が多い」と、現場の手応えを共有しました。

〜高橋委員 発言要旨〜

メディアの立場から「ほんのり硫黄湯」表現の戦略的活用について提言。「Discover Japan のような雑誌で取り上げる際、『アルカリ性単純温泉(ほんのり硫黄湯)』という表現は記事内で印象に残る。読者に長門湯本のお湯の質感が伝わりやすい」「温泉地としてのブランディングは、メディアでの取り上げ方の積み重ねで形成されていく。長門湯本のお湯の表現を確立することで、メディア露出の質も上がる」と評価しました。

〜梅川委員長 発言要旨〜

梅川委員長は「久しぶりにリアルで参加することができて嬉しい。オンラインだけでは伝わらない議論の質感が、対面の場には確かにある」と冒頭で述べ、コロナ禍からの段階的な対面復活を象徴する場であることを語りました。

議題の総括として、「今回の第6回は、基金活用方針の4つの柱という、これから10年の方向性を決める重要な会議になった。専門委員会の委員の皆様、そして事務局の丁寧な議論の積み重ねに敬意を表したい」「公民連携を大原則として位置づけた基金活用方針は、長門湯本温泉のこれからのまちづくりの土台となる」と総括しました。

恩湯のブランディング議論についても、「お湯の質感を言葉にするという取り組みは、温泉地経営の根幹に関わる。『ほんのり硫黄湯』を起点に、長門湯本温泉全体のお湯のブランディングを進めていただきたい」と、湯守側・まち会社側への期待を述べました。

閉会

以上、第6回「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」は終了しました。

 

この日に確立されたこと:

・長門湯本温泉みらい振興基金の活用方針(4つの柱):第1「公民連携での魅力向上」を大原則として明文化

・恩湯の温泉表記改善:「アルカリ性単純温泉(ほんのり硫黄湯)」という新しいブランディング表現の提案

・コロナ禍からの段階的回復:上半期入湯税前年比1.3倍、対面開催の段階的復活

 

コロナ禍から回復しつつある観光需要を背景に、長門湯本温泉のまちづくりは、基金運用の方針と温泉ブランディングという2つの大きな決定によって、次の段階への土台を固めました。リニューアル整備完了から2年半、まちは「整備の時期」から「運営とブランディングの時期」へと、着実に歩みを進めていきます。